日本人はどんなに美しいものを創造してきたか。忘れないように岡秀行さんが残しておいてくれてよかったと、本書を眺めながら何度も思うのです。
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『日本の伝統パッケージ』は、日本の伝統的なパッケージ222点収録した資料集。その昔、四季折々の菓子や食品を保存するために使ったのは、日本古来からある木、竹、藁、紙、布、陶器などの自然素材でした。これらの身近にある素材を巧みに生かしてパッケージとして利用しているのですが、驚くのはその造形美と機能性。
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山形の農民の生活から生まれた卵のパッケージは、数十本の藁だけで支えられた、簡素ながら非常に優れた美しいつくり。新潟であめをくるんだ熊笹は、解毒作用をもち永く保存が可能。半分に割った竹に詰められた羊羹は、食べる時にはそのまま器になる。そしてそれらのパッケージは、使われたあとは土に還ります。なんて理にかなっているのでしょう。
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季節に逆らわず歩みを合わせ、その時に手に入る素材のみで生きる。そのつつましさ、暮らしの中の工夫、自然への敬意、丁寧な手仕事、すべてが日本の美学なのです。