2018年に日本民藝館で開催されていた「柚木沙弥郎の染色」展へ行った際、作品の印象から制作年を当て合うゲームをしたんです。それがもう、全然当たらなくて。数十年前の作品はいつ見ても新鮮・モダンで、近年の作品はどこか懐かしく、あたたかい。その魅力に今もどっぷり浸かっています。
師である芹沢銈介も、その類稀なる色彩感覚とモノを模様として捉える才能で人々をあっと驚かせましたが、その眼は柚木作品に確かに受け継がれていると感じます。連続する縞模様はやがてさざ波に、小さな丸模様は優しい春の木漏れ日にも見えてくる。
“おお 神 ベン・シャーン 我に もの皆全てが絵に見える目玉を与え給え”
そんな氏の言葉には仕事にかける情熱と強い願いが宿り、それを経て生まれた作品には、目に映るすべてのものへの敬意に溢れているのです。
1922年生まれの柚木氏は、今年10月で97歳を迎えたそう。現在も精力的に活動されている、そのチャレンジ精神を思うだけで、喜びに胸が熱くなります。ひとつひとつ豊かな表情をみせる美しい布の歌声に、いつまででも耳をすませたい。