「生活を美化する泉は才能や技術や、又金などでは尚更ありません。只その方へ向けて眼を展(あ)くだけの心のみあります。」
1928年に発行された、『武井武雄の手芸図案集』の序文の言葉です。本書には、草花、動物、人魚、幾何学模様などをモチーフとした手描きの図案が100点掲載されています。武井武雄にしか生み出せない、まるで童話のような図案たちに心がときめくのは、わたしだけではないはず。
クッションや壁掛け、手提げづくりの参考や、イラストの資料にもオススメします。眺めているだけで満ち足りた気持ちになりますが、本人による解説を読むとさらに楽しい。
「これはいろんなキレ地をはぎ合わせて作るのです。」「花や鳥や人間や馬はいやだ、もう飽き飽きだ。といふ方にこれをお勧めします。」「そして枕のあたりにとりつけて月夜の夢でも見ることにしておきます。」(原文ママ)
氏と同時代に活躍した花森安治もそうですが、手元にあるものを使って生活を豊かに、美しくする工夫を楽しんでいるのが伝わってきます。わたしも秋の夜長、手を動かして刺繍に挑戦してみようかな。
布貼りに金の図案が輝く装丁にも注目してみてくださいね。