「専門分野をつくりコレクションせよ」と、詩人アンドルー・ラングが自著「書斎」でアドバイスしているように、どうやら愛書家たちにはマイルールがあるらしい。
本書「佐野繁次郎装幀集成」も、ひとりのコレクターの努力が結晶化したもの。画家・佐野繁次郎が手掛けた装幀本や表紙を描いた雑誌、通称「佐野本」をひたむきに集めています。
1930年代に渡仏し、アンリ・マティスに教えをうけたという佐野繁次郎。そのデザインの特徴といえば、なんといっても手書き文字。癖が強く、でも不思議と読みやすい。独特な文字が踊ります。これがまた油彩、水彩、パピエ・コレにマッチしていて、とてもモダン。洒落ています。本であり、絵でもある。ああ、これは集めたい。本棚に並べたい。よし、集めよう。
そんなコレクターのためのカタログとしてはもちろん、デザイナー向けの資料としても大変おすすめな1冊です。
ところで「おや、この手書き文字を取り入れたデザイン、どこかで見たことが...」と思う方もいらっしゃるかもしれません。そう、暮しの手帖社の花森安治。花森安治は佐野繁次郎のデザインに影響を受けたとされています。手書き文字をたぐって時代を遡るのも楽しそうですね。ベン・シャーン、佐伯祐三、サヴィニャック、ロートレックなどなど。掘り進めれば、未知の出会いがあるかも?