フランク・ロイド・ライトや夏目漱石と同時代に生き、妖怪好きで、当時「造家」としてくくられていた建物を「建築」という言葉に改めた建築家、伊東忠太。
築地本願寺や、湯島聖堂、京都の祇園閣など、有名な寺院や神社の設計を多く手がけています。アジア、欧米留学などで多くの建築物を見て学び、歴史家のような一面をもっているからでしょうか。氏の建築はどれもモダン。それもただ洋風な技術を取り入れているのではなく、自身の建築に異国を組み込んだ、伊東忠太ならではの洋風なのです。
そしてそこに欠かせないのが、随所に配置された動物たち。
『伊東忠太動物園』は、建築家・藤森照信と、写真家・増田彰久が、そんな不思議な動物を集め解説した、図鑑のような一冊です。
ライオンや鳥、象、猿などに加え、怪物や妖怪といった架空の姿をしたものも多数。ガーゴイルのように建築の守り神として鎮座しているところを見ると、ユーモラスで愛嬌のある存在に感じられます。
身近な場所では、阪急梅田駅の壁画や、上野国立科学博物館のドーム部とステンドグラスデザインなどで、氏の仕事を見ることができます。ぜひ、本書片手に、伊東忠太建築の動物を探す旅に出かけてみてはいかがでしょうか。