「Floating World」の日本語訳は浮世。定めがないこの世、つらくはかないこの世の中などという意味があります。
本書は、1990年代を象徴するロンドンのデザイン集団、”tomato”の創立メンバーの一人でもあるジョン・ワーウィッカーのデザイン集。小さい頃から北斎が大好きで、浮世絵について「芸術性と大衆性を同時に両立させている代表的なアート」と語っている氏は、浮世をタイポグラフィ、写真、ドローイングなどで表現しています。
序文から本文にいたるまで統一した記号が用いられていたり、デザインによって紙質が変わっていくなど、細部までこだわった興味深いつくり。
自由自在な配置のタイポグラフィは"tomato"のデザインの特徴でもありますが、墨のような黒で覆い尽くされていく文字や、ドローイングで描かれた筆跡は、死と生の美しさ、儚さを表現しているよう。400ページの、驚きあふれる浮世をご堪能ください。