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江戸の華・火消しが魅せた粋のすがた
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江戸の華・火消しが魅せた粋のすがた

江戸三火消図鑑

火事と喧嘩は江戸の華と申したもので...、と落語調で解説をしてもらいたくなる本日のおすすめ。 

 本書「江戸三火消図鑑」は染色下絵師・浮島彦太郎が描いた肉筆本の復刻版。火消とは、江戸幕府が編成した消防組織のこと。身分ごとに編成された大名火消し、定火消し、町火消の三つに大別され、江戸市中に広く配置されました。

 現代と異なり、当時の消防は火元や風下の家屋を破壊し、延焼を防止するという破壊消防。命がけで人々を守るたくましい男衆は市民の憧れだったのです。かっこいい。

とりわけ江戸っ子の人気を集めたのは、町火消。有名ないろは47組(のちに48組)ですね。彼らのユニフォームである火事装束は組ごとに意匠が異なるわけですが、それぞれの火消半纏、纏、提灯の文様には名称や由来などがあります。
江戸火消をデザイン、文化の両面から研究できる資料集はなかなかないのでは。江戸美学である「粋」を体現した火消のすがたを思い描きつつ、ご堪能ください。

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ブックディレクター。古本の仕入れ、選書、デザイン、コーディング、コラージュ、裏側でいろいろやるひと。体力がない。最近はキュー◯ーコーワゴールドによって生かされている。ヒップホップ、電子音楽、SF映画、杉浦康平のデザイン、モダニズム建築、歌川国芳の絵など、古さと新しさが混ざりあったものが好き。