ブックレビューBOOK REVIEW
「イヌイットの壁掛け」の中に登場するのは、動物や人、家や山など。描かれているのは日々の何気ない暮らしなのに、まるで童話の一場面のようで、耳を澄ませば楽しいストーリーが聞こえてきそうです。
カナダの先住民イヌイットの暮らしている極北は、一年の3分の2しか太陽が昇りません。夜のように暗い冬を乗り切るために、女性たちは家族のためにパーカー(防寒着)を縫い、その際に出る端切れを使って壁かけを作ります。
赤地に水色、黒地に黄や緑など思い切った配色なのに、決して派手ではなく、むしろ優しい。家族が少しでも明るく温かく暮らせるようにという女性の工夫が表れています。
誰かのために、手を動かして創作する楽しさ、美しさを思い出させてくれるようです。