木版でパンを焼こう。彦坂木版工房のワークショップを体験してきました
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木版でパンを焼こう。彦坂木版工房のワークショップを体験してきました

こんにちは、なつきです。
今回は久々のレポートブログ。3月某日に彦坂木版工房で行われたワークショップ体験の様子をお届けします。



彦坂木版工房とは

彦坂木版工房は、彦坂有紀さんと、もりといずみさんによる木版工房。木版の素晴らしさを伝えるため、食品のパッケージや広告、雑貨のイラストなどを数多く手がけるほか、展示会や木版のワークショップといった活動も精力的に行っています。
お2人の手がける木版画が、これまでわたしが抱いてきた木版画のイメージを180度覆すもので。ぜひノストスでも展示やイベントをしていただきたい!ということで、一足先にスタッフがワークショップを体験させていただくこととなりました。

彦坂木版工房 instagam

こちらが作品制作が行われている工房。明るい光が差し込む部屋には、制作に使われる道具や、インスピレーションのもととなる参考資料などが収められていました。あぁこんな空間で仕事してみたい。

しっかり手入れをされながら、使い込まれた道具たち
写真左が、この日ワークショップを開いてくださった、もりといずみさん。そしてお気づきでしょうか。声を掛け合ったわけでもないのに、ノストススタッフみんな、木版体験ということで黒い服を着てきたのであります。前のめり感がすごい。

版木の包み紙をよく見ると、「焼き芋」や「明太フランス」といった文字が。中に何の版木が仕舞われているかがひと目で分かるようになっているんです。

絵の具にも同じように印がついていて、水を差せばその時に使用した色を再現できるそう。

「これがかき氷のシロップで、これがチョコマフィンを作ったときのものですね。」と実際に見せてくださるもりとさん。説明を聞いているだけだと、なんだか料理教室に来たみたいで面白い。

これまでに制作した作品も、たくさん見せていただきました。こちらの山型食パンは何度も試行錯誤を重ねた結果、版木を複数に分けることで本物のようなふんわり感を表現できるようになったとのこと。だからパンの山の部分はふんわり、谷の部分はみちっと生地が詰まったように見えるんだなぁ。

そして彦坂木版工房の手がける野菜が、わたし大好きなのです。このしいたけだって、傘の模様の細かさといったら...。版画ってどこか平面的なイメージがあったけれど、こんなにも立体感や質感を表現できるものなんだと驚きました。

こちらのほっくり甘くて美味しそうな焼き芋も、複数の版木を使って刷られています。

皮の部分と、さらに黄色い中身も焼け具合ごとに別の版木で。幾重にも重なっているような色味は、こうして表現されていたんですね。それぞれに別に刷られた画が、はじめから一度に刷られたかのように紙の上で一体となっていることにも、本当に感動しました。

クリームパンと餡パンを刷ってみよう

木版画の奥深さに改めて感動したところで、早速ワークショップのスタートです。まずはもりとさんにお手本を見せていただく。

こちらが今日使う道具たち。クリームパンと、別の版木を使って餡パンをつくります。
ばれんを握るのなんて、小学生ぶりだ!

ちなみにこの「ばれん」にも、用途によって色々な種類があることも教えていただきました。現在日本で活動されているばれん職人は、お一人しかいないそうです。このばれんの本、欲しい。

さぁ、まずは版木に水を数滴のせて、刷毛で全体をくるくる。この水の量が意外に重要で、かつ難しい!足りなすぎると絵がのっぺりとしてしまい、逆に多すぎると色が滲んでしまうのです。

次は絵の具を乗せていきますが、ここからが大事なポイント。

布を使って、版木の一部を優しく拭き取るもりとさん。これが後々どんな効果をもたらすかは、刷ってからのお楽しみ。

絵の具を塗り終わったら、いよいよ刷る工程へ。うっかり紙を落としてしまわないよう、人差し指と中指でしっかり挟みます。

ズレないように、印の付いた溝にそっと乗せて...

パッ。

体重をしっかり乗せながら、ぐいぐいぐいっと擦ります。想像していたよりも、かなり力を込めるんだなぁ。そしてゆっくり紙をめくったら...

おおおおーー!もうこの時点ですごく美味しそうなパンが刷れました。
先ほど絵の具を拭き取った部分は、生地が焼けていない部分だったんですね。てっぺんのカスレもほどよいグラデーションになって、まるで本物のような立体感が出てる。スタッフの興奮は最高潮に。

次はカスタードクリーム。ひとくち齧ったところから覗く、小さなパーツだけを刷っていきます。

真剣に説明を聞くノストススタッフ。

先ほど刷ったパン本体に綺麗に組み合わさるように刷ったら、完成!いまにも甘い香りが漂ってきそうな、ふわふわのクリームパンが出来上がりました。このぽってりとしたフォルムとこんがり感、たまらなくないですか。

スタッフも刷ってみる

今回は同じ要領で、餡パンも作らせていただきました。餡パンはパンの部分と、上に乗る胡麻の部分が別の版木に分かれています。

教えていただいた通り、しっかり力を込めて刷っていく。これ、何枚も刷るとなったら結構な体力仕事では...。

焼けたー!じゃなくて、刷れたー!なんとも嬉しそうなわたくし。
ただ、かすれ具合はいい感じだけれど、ちょっと全体的にムラがあるような。もりとさんが刷ったときの整った輪郭線と、絶妙なカスレが生み出す柔らかさを出すのがいかに難しいかを実感しました。

刷るのはもちろんだけど、この胡麻用に版木を削るのだって、細かくて根気のいる作業だよなぁ。一粒一粒が、繊細な手仕事によって形作られてるんだもんなぁ。(という気持ちで胡麻を愛でる。)

そうこうしているうちに、餡パンも完成!胡麻もべったり絵の具をつけず、絶妙なかすれをつけることでカラッとした焼け感が出ました。

最後は自分で刷った作品を手に、みんなで記念写真。すごく楽しかった!

伝統的・古典的なイメージが強かったからか、どこか自分とは遠い存在だと思っていた木版画。それがこんなにも気軽に体験でき、同時にその奥深さや技術の進化まで知ることができるなんて。版画ならではの繊細な職人技と新たな木版画表現にふれることができた、とても嬉しい機会となりました。

彦坂木版工房さん、本当にありがとうございました!
おまけの打ち合わせ中の一コマ。
現在ノストスでのイベント開催に向け、目下計画中です。続報をどうぞお楽しみに!


写真:チェルシー舞花

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ノストスブックス店長。前職では某テーマパークのお姉さんや、不動産会社の営業をしていました。小説とクラシックなものが好き。一緒に、好きだと思えるものを沢山見つけましょう。