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真鍋博の見たかった未来社会。皮肉とユーモア、そして創造力への挑戦。
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真鍋博の見たかった未来社会。皮肉とユーモア、そして創造力への挑戦。

中野です。
イラストレーター・エッセイストとして活躍した真鍋博をご存知でしょうか?数多くのSF作品の挿絵を担当し、特に星新一とのコンビが有名です。星新一の描くSF世界に、そっと寄り添うような異国感漂うイラストレーションに見覚えがある方も多いのではないでしょうか?

真鍋博の特徴である、繊細で緻密な線と大胆な色彩は、当時の日本が持っていた未来への希望をそのままビジュアライズしたかのよう。今見てもおおいに想像力を刺激され、見ているだけでワクワクしてきます。

一方で文章も多く残し、私たちが生きる2016年の今をピタリと予言するような、未来の姿も書き残されています。60年代に書かれたものとは到底思えない。

本日はそんな真鍋博の著作をご紹介します。



絵でみる20年後の日本

読み進めるごとに驚くばかり。「副都心」はすでにその名前を冠したその名も副都心線があるし、「自動運転高速道路」は今まさにこれから実用化されようとしています。

この本の中からまだ実現していないものを見つけて実用化を進めたら、もしかしたら次のスティーブジョブスになれるかも?そんな気さえ起きてしまいます。

真鍋博のイラストとシニカルな文章によって、一つ読んでは想像し、一つ読んでは想像し、という思考の大冒険を味わえます。

絵でみる20年後の日本 | 真鍋博

絵でみる20年後の日本

著者
真鍋博
出版社
日本生産性本部
発行年
1967年
真鍋博がイラストとエッセイで綴る未来図。昭和40年代の日本が夢見た来るべき未来を、ユニークなイラストとともに描く。

真鍋博 Original 1975

「印刷した仕上がりを想定して描いたものが作品だ」ということを創作活動の基本に置いていた真鍋博。この作品集は、再現した複製画集ではなく、真鍋博のイラストレーションの原版フィルムを集成した、まさしくオリジナル作品集と呼べる一冊。イラストレーションはもとより、製版、印刷技術の高度な水準が、あらゆる指標になるように、という目的のために刊行されました。

ポスターから広告、雑誌の表紙など、約150点が掲載されており、大判サイズで印刷された色鮮やかなイラストレーション作品の数々を堪能できます。

真鍋博 Original 1975

真鍋博 Original 1975

著者
真鍋博
出版社
講談社
発行年
1975年
真鍋博のイラストレーション作品集。書籍の表紙画やポスターなどを多数掲載。

真鍋博の線の画集

こちらはその名の通り、色のない線の画集。線だけの作品が約400点も掲載されています。

線を引くというのは、絵画的決断だと思っている。(略)真白い紙に最初の一本の線を入れるときの勇気を、その線をどこまでも伸しつづける体力を、これからもこの細い体に神が与えたまわんことを。

かっこいいこと言うなぁもう。

真鍋博の線の画集

真鍋博の線の画集

著者
真鍋博
出版社
平凡社
発行年
1979年
真鍋博のイラストレーション作品集。新聞や雑誌、教科書などに掲載された作品をモノクロで多数掲載。

自転車讃歌

真鍋博は今見たり読んだりすることで、その凄さを感じる内容が多いです。前半はバネ式自転車、糸繰り自転車、ワイヤーサイクルといった、真鍋博ワールド全開の想像自転車イラストがフルカラーで掲載されています。後半に「本人による自転車、そして自転車の思想」というコラムが掲載されているのですが、これが大変に面白い。当時の社会問題であった公害問題や、利便性を追求する現代社会への警鐘を示唆する文章は、今まさに後回しにしてきたツケがいろいろなところで噴出しているじゃないか!と感じます。

自転車も当時と比べるとライフスタイルとして選択する人も多く、ここへきてようやく真鍋博に追いついたのではないかと思います。

自転車讃歌 | 真鍋博

自転車讃歌

著者
真鍋博
出版社
ぺりかん社
発行年
1973年
真鍋博が描く自転車の未来図。娯楽性や環境保護にも優れる自転車のすばらしさをイラストで描く。

2001年の日本

こちらもびっくりの連続。刊行年である1968年から33年後の未来はどうなっているか?というテーマを78分野に分け、印刷であれば、大日本印刷、病院であれば医療専門家といったように、それぞれのプロフェッショナルたちが詳細なデータとともに予想解説します。

例えば「電気」の項目では、「ガゾリンスタンドは充電器に変わる」と日本電気協会の偉い人が語ります。おぉ今そうなってる!

冒頭に、「自分たちが想像力を駆使して書いたこの本を、読んだ人がさらに想像力を働かせることこそが未来へと繋がるのだ」と書かれています。大真面目で熱く、そして発見がある本。

2001年の日本 | 真鍋博

2001年の日本

著者
真鍋博
出版社
朝日新聞社
発行年
1969年
真鍋博と、評論家・社会学者の加藤秀俊、そして朝日新聞社が共同編集で描く、21世紀の未来図。

真鍋博の発想交差点

こちらは完全に文章のみのエッセイ集。真鍋博の人となりがなんとなく理解できて面白い。日常のあらゆることをきっかけに、「こうなれば良いのでないか?」と常に考えていることがわかります。

現代はいつも動いていて、動いていないと不動の位置に立つことはできない。不動の位置とは、常に動いていることなのである。


またかっこいいこと言った。

真鍋博の発想交差点

真鍋博の発想交差点

著者
真鍋博
出版社
実業之日本社
発行年
1981年
真鍋博のエッセイ集。いろいろな出会いの場、つまり「交差点」に立ったときに広がる世界や、人との考え方の違い、驚きなどが生み出した著者の発想108篇を収録。

真鍋博のプラネタリウム

何度読み直しても飽きることなく、毎回新たな驚きを与えてくれる星新一。その星新一とのコンビで真鍋博が生み出した挿絵のみを集めた挿絵だけの本。星新一とはお互い干渉せず、打ち合わせもせず、自由に描けたと振り返る真鍋博。一話完結なのでキャラクターもタッチも引き継ぐ必要がなかったのが良かったと回想します。

関係ないですが、星新一のウィキペディアがかなり興味深いです。「奇人変人ぶりを遺憾なく発揮していた。」遺憾なく発揮とは気になる。

真鍋博のプラネタリウム | 真鍋博、星新一

真鍋博のプラネタリウム

著者
真鍋博、星新一
出版社
新潮社
発行年
1983年
星新一、真鍋博各々が語る思い出話に、文庫本初収録のショートショート6編を含む星作品のさわりを収録。それらを彩るのは真鍋博の挿絵。
真鍋博の著作を一気にご紹介しましたがいかがでしょうか?
個人的には、特徴的なイラストもさることながら、未来を予言するかのような文章が多く残っていることに驚きました。今読めば理解できますが、刊行当時の反応はどうだったんだろう?と余計な心配もしたり。

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ノストスブックス店主。歴史と古いモノ大好き。パンク大好き。羽良多平吉と上村一夫と赤瀬川原平と小村雪岱に憧れている。バンドやりたい。