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記録から記憶へ。路上の視覚革命に挑戦したストリートフォトグラファーたち。
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記録から記憶へ。路上の視覚革命に挑戦したストリートフォトグラファーたち。

こんにちは、中野です。
写真というと今一番身近なものはスマホ。誰もが簡単に撮影できる環境が整ってきて、より写真が身近に感じられるようになってきましたよね。インスタグラムなどに映える写真をインスタジェニックと呼んだり、みんな写真大好き。

個人的な好みですが、写真の中で一番好きなジャンルはストリートフォト 。スナップ、ドキュメンタリーフォトとも呼ばれますが、人々のファッションや街並み、時代性など、非常に興味深い写真集がたくさん存在します。 ということで、本日は個人的に気になるストリートフォトグラファーを年代順にご紹介してみようと思います。


ベレニス・アボット

1898年生まれのベレニス・アボットは、ニューヨークの大学でデュシャンに出会い、デュシャンがマン・レイ に紹介したことがきっかけで、写真家としての道を歩むことになった女性写真家です。

当初は彫刻を学んでいましたがどうにもうまく行かず、パリへ。そこでマン・レイと再会し、彼の助手として働き始めます。写真家として少しづつ力をつけていたアボットですが、数週間の予定でニューヨークへ戻った彼女が見たのは、大変貌を遂げた摩天楼都市でした。「これこそ自分が撮りおさえねばならない光景だ」と確信したアボットは、執拗にニューヨークの隅々を撮影し続けました。

ベレニス・アボットの世界

ベレニス・アボットの世界

編集
東京都写真美術館
出版社
東京都写真美術館
発行年
1990年
マン・レイに師事していたアメリカの写真家、ベレニス・アボットの図録。1990年に開催された展示に合わせて刊行。ポートレートやニューヨークの街並みなどをモノクロで掲載。別冊で英語版も付属。

ウォーカー・エヴァンス

1903年生まれのウォーカー・エヴァンス は、社会的リアリズムの視点を持ち続けた写真家です。世界恐慌下のアメリカの農業安定局 (FSA) のFSAプロジェクトで、南部の農村の悲惨な実態を目の当たりにしたエヴァンスは、おのずと社会というものや自らの行為の意味といったものに意識を持ちはじめていきます。

アメリカで最も静けさに満ちた写真を撮る男、と形容されたウェーカー・エヴァンス、好きです。

American Photographs

American Photographs

著者
Walker Evans
出版社
Museum of Modern Art
発行年
2012年
アメリカの写真家、ウォーカー・エヴァンスの作品図録。1920年代後半〜1930年代のアメリカの人々の生活を収めた、スナップショットをモノクロで多数収録。

アンリ・カルティエ=ブレッソン

1908年生まれのアンリ・カルティエ=ブレッソン もまたマン・レイに影響を受けたフランスの写真家です。マン・レイすごい。

1947年には写真家集団「マグナム・フォト」を仲間と結成し、世界中の決定的瞬間を撮影しました。ガンジーの暗殺前後や中国、インドネシアの国家転換期など、「なんでそのタイミングでそこにいたの?」と思ってしまうほどのフットワーク。

表紙のマティス の絵が有名なこちらの一冊は復刻版ですが、美しい構図を味わえる素晴らしい写真の数々が収録されています。

The Decisive Moment

The Decisive Moment

著者
Henri Cartier-Bresson
出版社
Steidl
発行年
2014年
写真家集団マグナムを創設したことでも知られるフランスの写真家、アンリ・カルティエ=ブレッソンの写真集。ストリートスナップを芸術として確立させた代表作「決定的瞬間」の待望の復刻版。

ロバート・フランク

少し飛んでロバート・フランクは1924年生まれ。スイス人です。

アメリカの裏の顔を写し出した写真集と言われていますが、ぼんやり眺めていると、アメリカ人でもない自分にも共感する感触というものを確かに感じます。どこかで会ったような、どこかで見たような街の風景。

アメリカンズ

アメリカンズ

著者
ロバート・フランク
出版社
宝島社
発行年
1993年
現代を代表する写真家の一人、ロバート・フランクの写真集。1955年から1956年の間アメリカ各地を撮影し、高度成長期真っ只中のその姿を真正面から捉えたその写真は、現代写真界に多大な影響を与えたとともに、彼の代表作となっている。

ウィリアム・クライン

デザイナー、画家でもあったウィリアム・クラインは1928年生まれ。ロバート・フランクと同時期、新しい写真表現を生み出した写真家の一人です。

ピントやアレ、ボケ、構図も極端に見上げたり俯瞰したり、連続写真を用いたりと、グラフィック的表現を駆使したクライン。写された現象が主張するのではなく、イメージを物質化するという考え方。

のちに映像、映画に活動の主軸を写したクラインですが、必然性を感じる写真ばかり。実は写真家としてはわずか5年あまりしか活動していないとは知りませんでした。

New York, 1954-1955

New York, 1954-1955

著者
William Klein
出版社
Marval
発行年
1996年
20世紀を代表する写真家、ウィリアム・クラインの写真集。ブレる被写体、フレーム全体に広がる画面構成など、荒々しく成長する都市ニューヨークを独特のスタイルで記録した、ウィリアム・クラインの代表的なスナップ写真作品集。

ユルゲン・シャーデベルグ

1931年生まれのユルゲン・シャーデベルグ。ドイツ人です。
ネルソン・マンデラの若かりし日の写真が数年前60万で落札されたというニュースがありましたが撮ったのはユルゲン・シャーデベルグ。アパルトヘイト時代の南アフリカを訪れた際に撮られたものだそうです。一冊の中で劇的に違う状況が起こっている、という現実に気がつかされます。

Witness

Witness

著者
Jurgen Schadeberg
出版社
Protea Book House
発行年
2004年
ドイツ出身の写真家、ユルゲン・シャーデベルグの写真集。1950年代からの約半世紀にわたり、南アフリカやイギリス、スペイン、フランスなど、世界各国を巡って撮り収めた作品をモノクロで多数収録。アパルトヘイト時代の混乱、ヨーロッパでの貧富の格差をまっすぐに見つめるドキュメンタリー。

ブルース・デビッドソン

1933年生まれのブルース・デビッドソン 。ブルックリンギャングシリーズでも有名です。 マグナム・フォトのメンバーでもあります。1980年当時、治安の悪かったニューヨークの地下鉄を撮影した写真集。撮影したグラフィティの存在を強くするために、モノクロからカラーに切り替えたと言われています。

写真見るだけで絶対乗りたくないですね。

SUBWAY

SUBWAY

著者
Bruce Davidson
出版社
St Anns Pr
発行年
2003年
国際的な写真家集団/マグナム・フォトの一員でアメリカ出身の写真家、ブルース・デビッドソンの写真集。地下鉄のホームや階段、車窓、さまざまな人種や階級が入り乱れる乗客たちなど、1980年代のニューヨークの地下鉄の現状をありのままに写し出す。
まだまだご紹介したい写真家がたくさんいますが、一人の写真家でも時代ごとに作品が変化していて、そちらも面白いのでまた別の機会にご紹介しようと思います。

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ノストスブックス店主。歴史と古いモノ大好き。パンク大好き。羽良多平吉と上村一夫と赤瀬川原平と小村雪岱に憧れている。バンドやりたい。