なんだか最近、アートが楽しくなってきました。これまでの表現や概念を疑い、抗い、それを塗り替えようとするチャレンジ精神。ワクワクします。
今更ですがポップアートの流れと代表作品 を調べてみたところ、とてもおもしろかったので、ブログにしてみました。それぞれの作品は見たことがあっても、深くは知らない方もいらっしゃるのではないでしょうか?そんな方にこそ読んでいただきたい。
イギリスから誕生したポップアート:デイヴィッド・ホックニー
まずは簡単に、ポップアートの生い立ちから。
遡って第一次世界大戦の終わり、シュルレアリスム 運動が生まれました。「理性にコントロールされない『真の現実(超現実)』に触れる体験」を求め、シュルレアリストたちは「現実を超えた現実」を描こうとしたのです。長くなるので詳しくはこちらのシュルレアリスム・ワンダーランド!画家たちが夢見た超現実世界 をお読みください。
シュルレアリスムの後、画面の中心を作らず、人が認識できるような「形」を描かない抽象表現主義 がアメリカで広がりました。芸術家たちは「現実」を捨て、大きなキャンバスに非幾何学的なモチーフを並べては感情や感覚を表したのです。
その後に登場したのがポップアート。デイヴィッド・ホックニーやリチャード・ハミルトンらがイギリスを拠点に、身近で通俗的なモチーフを描くようになります。
デイヴィッド・ホックニーは、ごく一般的な日常生活の風景を。抽象表現主義から比べると、かなりモチーフがはっきりしていて、かつよく目にするものだから、「アート」といっても親しみがありますよね。人々とアートとの距離感がグッと縮まったのも、ポップアートの特徴とも言えるでしょう。
こちらは、写真を使って「描いた」作品。娯楽のイメージが強いプールは、彼の作品のなかでよく見かけます。
このシリーズのみを集めた作品集「Camera Works」もとても素敵なんですよね。細かな写真を並べて大きな作品が出来上がっているさまを見ると、視点を増やせば世界が広がるんだよ、と教えられている気がする。
ホックニーのポスター作品を編纂した1冊もオススメ。日常風景という大衆的なイメージは印象派の時代にも描かれていましたが、再び作品のモチーフとして呼び戻されたことで「ポップアート」史が紡がれてゆくのです。
遡って第一次世界大戦の終わり、シュルレアリスム 運動が生まれました。「理性にコントロールされない『真の現実(超現実)』に触れる体験」を求め、シュルレアリストたちは「現実を超えた現実」を描こうとしたのです。長くなるので詳しくはこちらのシュルレアリスム・ワンダーランド!画家たちが夢見た超現実世界 をお読みください。
シュルレアリスムの後、画面の中心を作らず、人が認識できるような「形」を描かない抽象表現主義 がアメリカで広がりました。芸術家たちは「現実」を捨て、大きなキャンバスに非幾何学的なモチーフを並べては感情や感覚を表したのです。
その後に登場したのがポップアート。デイヴィッド・ホックニーやリチャード・ハミルトンらがイギリスを拠点に、身近で通俗的なモチーフを描くようになります。
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このシリーズのみを集めた作品集「Camera Works」もとても素敵なんですよね。細かな写真を並べて大きな作品が出来上がっているさまを見ると、視点を増やせば世界が広がるんだよ、と教えられている気がする。
ホックニー画集 ひとつの回顧
- 著者
- デイヴィッド・ホックニー
- 出版社
- リブロポート
- 発行年
- 1988年
デイヴィッド・ホックニーのペインティング、ドローイング作品を中心に収録。そのほか、クリストファー・ナイト「複合的な視覚」、ケネス・E・シルヴァー「舞台のホックニー」など多彩な評論エッセイも併せて掲載。
アメリカン・ポップの誕生:ジャスパー・ジョーンズ、ロバート・ラウシェンバーグ
ポップアートが大きく花開いたのはアメリカ。それまで、ジャクソン・ポロックやデ・クーニングらが築き上げてきた抽象表現主義の脅威となる存在が登場します。彼の名は、ジャスパー・ジョーンズ。
ともにポップアートを盛り上げていくことになるロバート・ラウシェンバーグと共同生活をしながら互いの作品を批評し合っていくうち、抽象表現主義に抗う革命的な表現が生まれました。
特に有名なのが、このアメリカ国旗を描いた作品。当時、「旗」「標的」といった、わかりやすく象徴的で、誰もが受け入れられるものを題材にすることは、それこそ反旗を翻すようなことだったようです。当時のアート界に激震をもたらしたこの絵は、オークションでは110億の値がついたとか。こうしてアートの購入が盛んになったことは、アートそのものを消費する時代の到来 も意味していました。
ちなみに、アメリカでは絵画を買うと税金が免除されるそうで、高い絵を買うことで節税にもなるんだそうな。ぜひ日本にも導入してください、偉い人。
写真で絵を描いたホックニー同様、ジョーンズの画材にも工夫があります。蜜蝋を混ぜることにより、ツヤと立体感が生まれたこの絵の具をキャンバスに載せるように描くことで、「平面的なオブジェ」として厚みのあるペインティングの方法を示しました。これは、壁に飾られ、平面で収まっていることが当たり前だったアートが、ぐっと3次元に、現実世界に近づいてきたことを象徴する作品でもありました。ここでもまた、アートと俗世の距離が縮まった のです。
一方、朋友でありライバルでもあったロバート・ラウシェンバーグは、より身近で消費 するモチーフを描いて大衆文化を鮮明に描き残していきます。こちらは人間にとって欠かせない「食」を象徴するパンと、女性の必須アイテムである口紅。ポップアートのキーワードとして、「セクシュアリティ 」も浮かび上がってきますね。
こちらの図録では、アメリカのポップアート史を語るうえで外せない画家たちの作品を一挙に見ることができます。
ポップアートのアーティストたちが夢の共演を果たしたこちらもオススメ。
ともにポップアートを盛り上げていくことになるロバート・ラウシェンバーグと共同生活をしながら互いの作品を批評し合っていくうち、抽象表現主義に抗う革命的な表現が生まれました。
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ちなみに、アメリカでは絵画を買うと税金が免除されるそうで、高い絵を買うことで節税にもなるんだそうな。ぜひ日本にも導入してください、偉い人。
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こちらの図録では、アメリカのポップアート史を語るうえで外せない画家たちの作品を一挙に見ることができます。
現代アメリカ版画の40年 巨匠たちと版画工房ULAE
- 編集
- セゾン美術館
- 出版社
- セゾン美術館
- 発行年
- 1998年
アメリカンポップのアーティストたちの作品を手がけた版画工房、ユニヴァーサル・リミテッド・アート・エディションズ(ULAE)の仕事を紹介する展示の図録。
版画家/ケネス・タイラーが様々なアーティストとともに作り上げた作品を収録した1冊。デヴィット・ホックニー、ジャスパー・ジョーンズ、ジョセフ・アルバースなど錚々たるアーティストが参加。
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ポップアートの興隆:アンディ・ウォーホル、ロイ・リキテンスタイン
ポップアートといえばこの人。ようやくアンディ・ウォーホルの登場です。
コカ・コーラ、キャンベルスープといった大量生産・大量消費 される身近なモチーフ。複製するという手法そのものにも、生産性を感じさせます。
お茶の間を賑わす大女優のマリリン・モンローも、おそらく世界一知られている絵画であろうモナリザも、シルクスクリーンでぷよぷよのように増殖。その存在は稀有であるはずなのに、テレビや広告でよく見かけるから「大衆的」だと見なされている。この矛盾もおもしろいですね。
コミック調 で大衆娯楽を表現したのが、ロイ・リキテンスタイン。インパクトの強さは何年経ってもご健在。
こちらはジェームズ・ローゼンクイスト。画家になる前は看板屋でアルバイトをしており、大きな絵を描くのはお手のものだったそうです。キャンバスが続く限りあらゆる「ポップさ」をコラージュしたペインティング作品は圧巻。死ぬまでに生で見てみたい!
これらポップアートを代表するアーティストたちの作品、を時代の流れに併せて辿ることができるのがこちら。一度は見たことのある作品を一挙に見ることができる、いいとこ取りの1冊です。
アンディ・ウォーホルの他にも、キース・ヘリングやクリスト、さらにはアラーキーまでマリリン・モンローにまつわる作品を発表しています。エルヴィス・プレスリーも併せ、時代のアイコンはアーティストたちの目にどう映ったのか、見比べて楽しんでください。
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これらポップアートを代表するアーティストたちの作品、を時代の流れに併せて辿ることができるのがこちら。一度は見たことのある作品を一挙に見ることができる、いいとこ取りの1冊です。
Le Pop Art
- 著者
- Marco Livingstone
- 出版社
- Hazan
- 発行年
- 1990年
1960年代、アメリカでの大衆文化の開花に伴い興隆したポップアート。その代表的なアーティストの作品を集めた資料集。
マリリンとエルヴィスというポップカルチャーのアイコンをモチーフにした作品を編纂。アンディ・ウォーホル、シンディ・シャーマンらが参加。
「性」のポップアート:トム・ウェッセルマン
「性」のポップアートを描いた人物として欠かせないのがトム・ウェッセルマン。「グレート・アメリカン・ヌード」シリーズが有名です。
「性」と「静」物。ヌードの女性はのっぺりと平面的に描かれているのに対し、オレンジや電話機はツヤをつけ、立体的に描かれている不思議な画。ペインティングのコラージュといったところでしょうか。
日焼けしている胸から連想されるプールや海、タバコといった嗜好の匂いがふわりと漂ってくる、なんともセクシーな作品。
パトリック・コールフィールドもペインティングの技法をコラージュした作品を描いています。模式的なタッチのベースに、写真かと思うような実に緻密なタッチが浮かび上がってくる斬新な作風。
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Wesselmann
- 著者
- Tom Wesselmann
- 出版社
- Taschen
- 発行年
- 1980年
トム・ウェッセルマンの代表作「グレート・アメリカン・ヌード」シリーズをはじめ、多彩なペインティングやドローイング作品を収録。
日常風景をモチーフに、明確な輪郭線と平面的な彩色によって、模式的なタッチと具象的なタッチをミックスさせた、まるでコラージュのようなペインティング作品集。
写真で描くポップアート:リチャード・プリンス
アメリカの写真家/リチャード・プリンスは、広告や雑誌・本など、大衆的なアイテムを撮影することによって「複製」し、ポップを再提示しています。
ポップアートの系譜だと知らずにこの写真を見たときは、何が伝えたいのかよくわからなかったのですが、そうだと知ってからはとてもおもしろい表現だと思うようになりました。よくよく見たら、写真集のタイトルも大衆的なキーワードもりもりもりだくさん。
さらにテーマを女性だけに絞った写真集もあります。
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Adult Comedy Action Drama
- 著者
- Richard Prince
- 出版社
- Scalo
- 発行年
- 1995年
絵画、広告などを撮影することによって「引用」し、カルチャーのアイコンやシンボルをカオティックに編集したリチャード・プリンスの写真集。
決してわかりやすいものを描けばウケがいいわけでもないし、はちゃめちゃなものを描けばそれが新しい表現に必ずしもなるとは限らない。アートって難しい。でも楽しい。