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女性であることを強みにかえて。戦う女・石岡瑛子の広告アートディレクション術
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女性であることを強みにかえて。戦う女・石岡瑛子の広告アートディレクション術

中野です。

女の人って強いですよね。母は強しと言いますが、母じゃなくても強いのに母になったらそりゃ強いです。自立した女性は強く、そして美しい。

女性に対する偏見もまだ多かった60年代初頭から広告という世界に飛びこみ、のちに映画や舞台の衣装デザインで世界的に評価された石岡瑛子は、そんな強く美しい女性の代表です。73歳で亡くなるまでスーパーウーマンであり続けました。

本日は石岡瑛子の広告アートディレクター時代をご紹介します。



石岡瑛子風姿花伝

「もし私を採用していただけるとしたら、グラフィックデザイナーとして採用していただきたい。お茶を汲んだり、掃除をしたりするような役目としてではなく。それからお給料は、男性の大学卒の採用者と同じだけいただきたい。」

資生堂の面接でこういってのけた石岡瑛子のパワフルな活動はここからスタートします。

資生堂から独立した1970年以降、パルコのイメージ戦略におけるトータルディレクションを任されると、石岡瑛子は革新的な広告の数々を世に生み出します。


石岡瑛子風姿花伝 石岡瑛子風姿花伝 (上下)1975年パルコメディアキャンペーン CD:石岡瑛子 AD:石岡瑛子 C:長沢岳夫 S:三宅一生

コレクションで多忙な三宅一生を口説き落とし、2人でイメージに合う素材を探し回って撮影に挑んだ広告。コピーと一体となって秀逸な批判精神。


石岡瑛子風姿花伝 1976年パルコメディアキャンペーン
CD:石岡瑛子 AD:石岡瑛子 P:横須賀巧光 C:長沢岳夫 S:三宅一生

男性の考えた女性像に忠実に従うことが正解とされた今までの常識に、黒人女性と俳句(蕪村)を組み合わせることで強烈なアンチテーゼを投げかけた広告。自由に自立した女性像を提案して見せた。


石岡瑛子風姿花伝 沢田研二自身の提案を受け、スターを題材に広告を作ることにあえてチャレンジした広告。沢田研二をヌードにすることで、男という固定観念を壊すことも試みた。


石岡瑛子風姿花伝 石岡瑛子風姿花伝 1977年パルコメディアキャンペーン
CD:石岡瑛子 AD:石岡瑛子 P:藤原新也 C:長沢岳夫

テーマは日本人のルーツとは何か?衣服の原点とは何か? 刺激的な説得力を持つ方法を模索し、インド、モロッコ、ケニアの奥地にてロケを敢行。掲げたテーマのスケールの大きさに驚きます。パルコの声として発言することに意味がある。


blog_0615_08 CD:石岡瑛子 AD:石岡瑛子 P:沢渡朔 C:杉本英夫

角川書店は当時ほとんどマイナーだった文庫本キャンペーンを打つことを考えます。石岡瑛子が手がけた、資生堂在籍時の広告ポスターに強烈な印象を持っていた角川春樹はこのキャンペーンに彼女を指名します。考え抜いた末に出した答えは、女性を刺激的に活性化させるための洒落た冗談。


石岡瑛子風姿花伝 石岡瑛子風姿花伝 石岡瑛子風姿花伝 石岡瑛子風姿花伝 ニューヨークでレニ・リーフェンシュタールの写真集を手にとり、衝撃を受けた石岡瑛子はインタビューで本人と意気投合。戦う女性同士感じるものがあったのでしょうか。その後西武美術館で行われた写真展のトータルディレクションを任されます。会場デザイン、写真集、宣伝物すべてをまとめ上げ、のべ20000人もの観客動員を記録し、大成功に導きました。

レニ・リーフェンシュタールもまた波乱万丈な強い女性の代表です。今度書きます。

女優、映画監督、そして写真家として活躍したレニ・リーフェンシュタール。アフリカのヌバ族を被写体に、レニが10年間にわたり撮影し続けた写真作品を、石岡瑛子が構成。
Nuba



石岡瑛子風姿花伝 フェイ・ダナウェイを観音像に見立てた強烈なビジュアル。敗戦から「東洋は西洋を着こなせるか 」ということをずっと目指してきた日本人に、パルコからの大きな、そして大胆な質問「西洋は東洋を着こなせるか 」。

石岡瑛子が手がけた数々の広告は、世の中にある「女性」のイメージ(あるいは男性が思う女性のイメージ)を覆し、女性は自立した一人の人間である、というメッセージが常に込められていました。

本書には、黒澤明、田中一光、角川春樹、五木寛之、松岡正剛、操上和美など、超一流のクリエイターたちがコメントを寄せています。誰もが石岡瑛子の全身全霊をかけた完璧主義と諦めない姿勢に尊敬の念を抱きました。



石岡瑛子風姿花伝

石岡瑛子風姿花伝

著者
石岡瑛子
出版社
求龍堂
発行年
1983年
パルコの広告、マイルス・デイビス「TUTU」のジャケットデザイン、北京オリンピック衣装、そして様々な映画作品の衣装デザインなど世界的に活躍したデザイナー・石岡瑛子の作品集。
1980年以降は拠点をニューヨークへ移し、映画の衣装デザインや舞台セットデザインを手がけ数々の世界的な賞を受賞します。 その軌跡を石岡瑛子自らが語った一冊。こちらも興味のある方はぜひ読んでみてください。

世界から熱烈な支持を受けるデザイナー・石岡瑛子が自身の活動を振り返る自伝的エッセイ集。
私 デザイン
本書のタイトルは世阿弥の風姿花伝から。石岡瑛子が自身に求めた姿勢と風姿花伝という言葉に、何かしっくりくるヒントがあるかもしれないですね。これは読むべき本のリストに入れておこうと思います。

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ノストスブックス店主。歴史と古いモノ大好き。パンク大好き。羽良多平吉と上村一夫と赤瀬川原平と小村雪岱に憧れている。バンドやりたい。