こんにちは、石井です。
夜の散歩はお好きですか?
散歩をするなら私は完全に夜派です。電車やバスに乗らずに数駅分を歩くだけで、街は昼間とは異なる顔を見せてくれます。過ごしやすい気候のこの季節、深夜の散策に出掛けてみてはいかがでしょう。
ということで本日は、表情豊かな夜の風景と空気を閉じ込めた写真集をご紹介します。
Paris After Dark | ブラッサイ

夜を写した写真集といえばまず思い浮かぶのはブラッサイの代表作「夜のパリ」です。

時代は1930年代初期。ブラッサイは大型のビューカメラを手に夜のパリを歩き回り、街角で出会ったドラマチックな光景を写真におさめました。彼が好んで撮影したのは地下鉄の駅、ビストロ、または裏通りにたむろする労働者や娼婦たち。

街が放つ微かな光と、閃光電球(旧型のストロボ)によってドラマチックな演出がなされています。ストロボの設置位置で写真の表情は大きく変わりそう。

古い街並みの深い暗やみと、そこに息づく人々の確かな生命力に、なんとも惹きつけられます。
Paris After Dark
- 著者
- Brassai
- 出版社
- Bulfinch
- 発行年
- 2001年
ハンガリー出身の写真家、ブラッサイが1930年代のパリの夜を撮った写真集。ビストロ、エッフェル塔、凱旋門、駅などパリの独特な雰囲気をモノクロームで表現した名作。
夜の都市を見事な撮影技術で記録した作品集としては、奈良原一高の「ヴェネツィアの夜」もおすすめです。美しい。
奈良原一高の写真集。ヴェネツィアの夜の光景に魅了された著者が10年の年月を費やし、落日、舟の描く光跡、橋と迷路と広場、雷光、花火などその華麗な闇の世界を記録。
路上の光暈 | 酒井淑雄

タイトルの「光暈(こううん)」とは、太陽や月のような光るものの周辺にかかる、淡い光のかさのこと。本書は、明明と夜中も照らし続ける高速道路や駐車場の照明がつくりだす光暈を、モノクロの明暗のみで表現した写真集です。

舞台となるのは著者縁の街、千葉県土浦。

見慣れているはずの日常的な風景が、夜になると見せるもうひとつの姿。それはくっきりした人工物の輪郭と、境界線の曖昧な光がつくりだすのかもしれません。ああ〜、ほっつき歩きたい。

まさに、深夜散歩で出会う光景。

前述のブラッサイは夜の闇を深く写しとりましたが、「路上の光暈」は煌々とした光に照らされた都市の姿をリアルに浮き彫りにしています。
路上の光暈
- 著者
- 酒井淑雄
- 出版社
- モール
- 発行年
- 1998年
酒井淑雄の写真集。夜の都市の景観を、プラチナ・プリントの技法でとらえた大判写真集。
Between the Lights | 松田敏美

昼と夜の狭間、黄昏どき。本書「Between the Lights」はそんな短く曖昧な時間帯を切り取った写真集です。日本、イギリス、アメリカなど、世界各地の幻想的な時空間を静かに眺められる1冊。個人的にもお気に入りの作品集です。

静けさと、しっとりとした湿度を感じられる写真が好きです。

人の気配が薄く、しっかりとセッティングされたオブジェのように見える街。気づけばモノクロームの作品ばかりをご紹介していましたが、色を削ぎ落とした写真はより深く情緒を感じさせてくれます。
Between the Lights
- 著者
- 松田敏美
- 出版社
- Ricochet
- 発行年
- 2003年
写真家/松田敏美の写真集。日本、イギリス、アメリカ、様々な都市や土地を背景に、光と闇の狭間にある「黄昏」をモノクロで記録した写真作品集。
夜がテーマというわけではないのですが、光と闇の表現が印象的な写真集としてはトレント・パークの「Minutes to Midnight」が挙げられます。雑踏の中で光る人影、薄暮の空を舞う無数のコウモリ、ロードキルによって死んだ動物。パークの母国・オーストラリアで撮影された作品群は強烈な写像をのこし、暗くミステリアスな魅力が詰まっています。
マグナム・フォトのメンバーでもある写真家、トレント・パークの写真集。軌跡を敢えて残したり、粒子感を出したりと技巧的なモノクロ写真を多数掲載。
愛犬モグー氏と一緒に夜に世田谷の裏路地をそぞろ歩くと、タヌキのカップルのデートや、ハクビシンの散歩によく出くわします。そんな夜行性のいきものとの思わぬ出会いもありますし、むせかえるような花の香りや微かな虫の声に気づくことができたりも。そう、夜にだけ感じることのできるグルーヴがあるのです。だから、深夜徘徊は止められないのですね。
それではみなさま、良い週末と良い夜を。