パッケージデザインといえば、どんなものを思い浮かべますか?あたりを見渡せば様々なすがたの包装物が目にはいると思います。華やかでエレガントなデザインでパッケージングされた化粧品やお菓子。ペーパーボックスやファンシーでキラキラした包装紙にくるまれた特別な贈り物。機能性と耐久性と親しみやすさを兼ね備えた大衆商品。
パッケージデザインは多くの可能性を秘めていると同時に、経験や技量を要求される仕事。なぜなら、グラフィックデザイン、イラストレーション、タイポグラフィ、素材についての知識、予算、消費者心理などが合わさってはじめて完成するものだから。作り手はほんとうに大変です。
そこで本日はヨーロッパのアール・デコと日本の伝統的なパッケージデザインを軸に、古今東西の包装物を編纂した書籍たちをご紹介したいと思います。
アール・デコのパッケージ
1920年代に華開いたアール・デコはパリ・ニューヨークを中心に、世界の建築、美術、ファッションなどに影響を与えました。当然、ひとびとの暮らしに密着した生活用品のパッケージデザインも大きな進化を遂げたのです。ヨーロッパではアドルフ・ムーロン・カッサンドルやポール・コランが活躍し、日本では杉浦非水がモダンなデザインのパッケージやポスターを生み出しました。
宝石のように彩り豊かなフェイス・パウダーのパッケージ。写真複製の技術が未熟な時代なので、イラストレーションによる表現が主流です。化粧品というより、美しくなれる魔法の粉といった趣ですね。日本でいちはやくアール・デコのデザインをパッケージや広告に取り入れ、女性へ向けてアプローチしたのは資生堂でした。
煙草のパッケージは紙製の函だけではなく、ブリキ缶のものも。
メタリックな紙とデコラティブなデザインがマッチしているチョコレートの包装紙。
コーヒーや紅茶は装飾を施された缶に詰めて。書体の組み合わせ方がとても参考になります。輸送時のスタッキングを念頭に入れたプロダクトデザインも既にこの頃からはじまっていたのですね。
アールデコのパッケージデザインにまつわる書籍は意外と少ないなか、大判サイズで200点以上のパッケージを掲載している本書は、デザインの参考資料としてかなりおすすめです。著者・木村勝自身もパッケージデザインの第一人者。氏の手がけたパッケージデザイン作品集も合わせてどうぞ。
宝石のように彩り豊かなフェイス・パウダーのパッケージ。写真複製の技術が未熟な時代なので、イラストレーションによる表現が主流です。化粧品というより、美しくなれる魔法の粉といった趣ですね。日本でいちはやくアール・デコのデザインをパッケージや広告に取り入れ、女性へ向けてアプローチしたのは資生堂でした。
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資生堂の初代社長にして写真家でもある、福原信三の図録。自身の写真作品のほか、コレクションの美術品をカラーとモノクロで多数収録。また、資生堂商品のパッケージや広告デザイン、店舗デザインなども併せて掲載。
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日本の記念・観光たばこデザインを振り返る図録シリーズ、第2巻。昭和44年から昭和46年までに発行された記念たばこ、意匠替えたばこ、観光たばこ、広告つきたばこの多種多様なパッケージデザインを掲載。
コーヒーや紅茶は装飾を施された缶に詰めて。書体の組み合わせ方がとても参考になります。輸送時のスタッキングを念頭に入れたプロダクトデザインも既にこの頃からはじまっていたのですね。
アールデコのパッケージデザインにまつわる書籍は意外と少ないなか、大判サイズで200点以上のパッケージを掲載している本書は、デザインの参考資料としてかなりおすすめです。著者・木村勝自身もパッケージデザインの第一人者。氏の手がけたパッケージデザイン作品集も合わせてどうぞ。
包 TSUTSUMU
日本における伝統的なパッケージングは他に類のない美事さがあります。自然の素材、折り目正しさ、知恵と工夫、手先の器用さ、洒落の精神。包むという行為には、はるか昔から受け継がれてきた日本特有の価値観が凝縮されています。
東北の農村から生まれた暮しの知恵の結晶、米作りの廃物であるわらを再利用した包装。細工の巧みさはもちろん、通気性、運搬性、内容検査の容易さなど、完璧なパッケージと言えるのではないでしょうか。ちなみに運搬後のわらは燃料として使用していました。パーフェクト!
左は祝い事の酒容器。右は祝儀・不祝儀袋。めでたい時もそうでない時も、「こころ」を包もうとするのが日本人の心理。この精神はすべての伝統パッケージのかなめでもあります。
京都の鱧すし。丸竹を割って身と蓋に利用した、洗練のミニマム包装。
ちまきなど、笹を使用したパッケージいろいろ。
おいしく、見た目美しく、香り豊かな欲張り仕様。
京菓子のパッケージ。染紙や空押し加工など、さりげなくも風格を感じるあしらい。そしてここにも季節が生きています。
こうして脈々と受け継がれてきた伝統的なパッケージデザインの精神や技術は、かたちを変え進化しながら現代へつながっていきます。もしパッケージデザインに悩んだら、「こころを包む」という原点に立ち返ってみてはいかがでしょうか。ご先祖さまたちの粋で豊かなアイデアや、大いなる知恵が助けになってくれるかもしれません。
東北の農村から生まれた暮しの知恵の結晶、米作りの廃物であるわらを再利用した包装。細工の巧みさはもちろん、通気性、運搬性、内容検査の容易さなど、完璧なパッケージと言えるのではないでしょうか。ちなみに運搬後のわらは燃料として使用していました。パーフェクト!
左は祝い事の酒容器。右は祝儀・不祝儀袋。めでたい時もそうでない時も、「こころ」を包もうとするのが日本人の心理。この精神はすべての伝統パッケージのかなめでもあります。
京都の鱧すし。丸竹を割って身と蓋に利用した、洗練のミニマム包装。
ちまきなど、笹を使用したパッケージいろいろ。
おいしく、見た目美しく、香り豊かな欲張り仕様。
京菓子のパッケージ。染紙や空押し加工など、さりげなくも風格を感じるあしらい。そしてここにも季節が生きています。
こうして脈々と受け継がれてきた伝統的なパッケージデザインの精神や技術は、かたちを変え進化しながら現代へつながっていきます。もしパッケージデザインに悩んだら、「こころを包む」という原点に立ち返ってみてはいかがでしょうか。ご先祖さまたちの粋で豊かなアイデアや、大いなる知恵が助けになってくれるかもしれません。
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原研哉と佐藤卓によるパッケージデザイン作品集。ウイスキーボトル、缶コーヒー、化粧品など、身近でありながらシンプルで作品性の高いパッケージをカラーで多数掲載。