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ガロ20年史からひも解く、めくるめく実験的漫画の世界
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ガロ20年史からひも解く、めくるめく実験的漫画の世界

こんにちは、石井です。

GWも後半ですね。みなさまどこか遊びに行かれていますか?家でのんびりしていますか?それともお仕事?石井は元気にフル出勤です。仕事は楽しいのでなんにも問題はございません。でも、もし、もしもですよ?3連休が2回連続で手に入っちゃったとしたら。前半はどこかに外出するとして、後半は全身全霊をかけてダラけたい。ふとんの中でひたすら漫画を読んで、スマホも見ずに、一歩も外に出ずに1日を終えたい。動かざること山のごとく。

というささやかな夢をあたまの中で膨らませていたところ、妄想が止まらなくなったので、本日は漫画にまつわる書籍をセレクトしてみました。1960年代から様々な異才を発掘し輩出してきた、伝説の漫画雑誌「ガロ」を中心におおくりします。



木造モルタルの王国 ガロ20年史

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木造モルタルの王国 ガロ20年史

出版社
青林堂
発行年
1984年
1964年から2002年まで刊行された漫画雑誌「ガロ」の20周年記念アーカイヴ。
「月刊漫画ガロ」は1964年に生まれ、2001年に休刊するまでのあいだ、日本のサブカルチャーを牽引したオルタナティブ・コミック誌。まるで百科事典のようにぶ厚い本書は、常に独創的な新人を発掘し続けたガロの20年を振り返るアーカイブです。白土三平、水木しげる、つげ義春、花輪和一、佐々木マキ、赤瀬川原平など、総勢80名を超える作家陣の短編漫画を掲載。表題は糸井重里、装丁は羽良多平吉が手がけています。

それでは、本書に掲載されているなかから「ガロ」でデビューした作家を中心に、その作品と関連書籍とひも付けながらご紹介したいと思います。

garo_07 garo_08 佐々木マキ「ぼくのデブインコちゃん」より。

いまでは村上春樹の著作の表紙画や、絵本作品で知られる佐々木氏。デビューは1966年の「ガロ」でした。夢見心地で先の読めない、超現実的で実験的な作風が光っています。

「月刊漫画ガロ」出身の絵本作家・イラストレーター/佐々木マキによる漫画作品集。「天国でみる夢」ほか、13篇の初期作品を掲載。
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garo_09 赤瀬川原平「おざ式」より。

タイトルから察することができるように、原稿がまったく進んでいないのに掲載予告を打たれてしまった著者が、苦肉の策として描き上げた(風の)パロディが散りばめられた作品。こういった変化球というか、魔球的な作品が飛び交うのも「ガロ」ならでは。

garo_10 1960年代には「ハイレッド・センター」などの前衛芸術活動をはじめ、1970年は「櫻画報」など独自の批評を盛り込んだイラスト作品を展開した赤瀬川原平。朝日ジャーナルで当時連載されていた「櫻画報」は持ち前のパロディ精神と風刺を効かせすぎた結果、回収・休刊事件に発展。「櫻画報」はのちに「ガロ」で復活を果たし、水を得た魚のように活き活きと社会をぶった斬り続けます。

1970年代に「朝日ジャーナル」や「ガロ」に掲載された赤瀬川原平の漫画「櫻画報」のアーカイヴ集。「アルバム櫻画報史」、「野次馬画報」、「略式櫻画報」などを掲載。
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赤瀬川氏の巻き起こした騒動は枚挙にいとまがありません。有名なのは「千円札裁判」ですね。発表した作品が通貨及証券模造取締法違反に問われ、多くの文化人・メディア・法廷を巻き込んだ裁判の経緯は「オブジェを持った無産者」にまとめられています。ご興味あるかたはぜひ。

芸術家であり、文筆家としても知られる赤瀬川原平の自伝的作品。
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garo_11 garo_12 糸井重里と湯村輝彦の共作漫画「ペンギンごはん」より。

表紙画を長く担当したこともあり、「ガロ」の顔として湯村氏の絵を記憶しているかたも多いのでは。ナンセンスとヘタウマブームの引き金となった名作です。バイオレンスでパンクなペンギン。憎さあまってかわいさ100倍。

イラストレーター・湯村輝彦の作品集。「ガロ」の表紙、糸井重里「情熱のペンギンごはん」など、広告や雑誌・書籍に提供したイラスト作品を多数掲載。
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garo_13 garo_14 ますむらひろし「再会」より。

宮沢賢治の童話や、ファンタジックで透明感のある絵柄のイメージが定着しているますむらひろしも、実は「ガロ」出身。初期の作品はよりダークな趣き。絵柄の可愛らしさと、ときどき陰鬱な空気をかもし出すストーリーの対比が好きです。

漫画家、ますむらひろしの絵本。人と猫が言葉を交わす空想世界を舞台に、主人公である猫のヒデヨシの冒険を描く。
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創刊当時は規定の作家数を埋めるために水木しげるが複数の名義で投稿したり、所在がわからなくなってしまったつげ義春に「連絡乞う」と誌面で呼びかけたりと、エピソードにはことかかない「ガロ」。

そんな「ガロ」の歴史は経営難との戦いでもあります。販売部数が落ち込み原稿料が払えなくなっても作品を発表し続ける作家たちと、根強いファンたちに支えられて「ガロ」は生き延び続けました。ここまで狭く、そして深く愛された漫画雑誌は他にないのでは。その理由を知りたいかたには、ガロが産み育てたガロリストたちによるコメント集「ガロ曼陀羅」がおすすめです。

多種多様な作家や関係者が「ガロ」に寄せた書き下ろしの文をまとめたもの。そのほか、創刊号から本書発刊当時までの全表紙や、「ガロ」掲載全作品リストなども併せて収録。
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冒頭のはなしに戻りますが、もし引きこもれるなら、オーナー中野に借りている「風雲児たち」とiBooksで大人買いした「達人伝」を読破したいです。歴史好きなら、両作品ともぜひおためしあれ!

ああ、漫画の海で溺れたい。



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ブックディレクター。古本の仕入れ、選書、デザイン、コーディング、コラージュ、裏側でいろいろやるひと。体力がない。最近はキュー◯ーコーワゴールドによって生かされている。ヒップホップ、電子音楽、SF映画、杉浦康平のデザイン、モダニズム建築、歌川国芳の絵など、古さと新しさが混ざりあったものが好き。