薔薇十字社という出版社をご存知ですか?薔薇十字社は1969年に設立され、1973年に倒産するまでの4年間に外国文学、日本文学、評論集などを次々に刊行した出版社です。小規模な出版社であるにもかかわらず、個性豊かな執筆陣、美しいブックデザインを施された書籍にファンも多いのではないでしょうか。ノストスブックスの文学棚でも、ひときわ異彩を放っています。
もともとは、堀内誠一や野中ユリによる装丁に惹かれて集め始めた薔薇十字社本。ですが次第に、澁澤龍彦や種村季弘、巖谷國士など、同時代に活躍した文学者たちの交流が網の目のように広がる様子、博学多識な彼らが活き活きと語る論考、そしてすぐれた文芸家たちのあやつる言葉に魅せられて、いつのまにかお気に入りの出版社になってしまった次第であります。
今日はそんな薔薇十字社の書籍から15冊をご紹介します。
かれ発見せり | 加藤郁乎
詩人・俳諧評論家、加藤郁乎の評論集。昭和45〜47年にかけて発表された評論が編纂されています。詩や俳諧論にとどまらず、文芸とカルチャーのミックス紙「黒の手帖」への寄稿文、稲垣足穂の作品論、吉岡康弘の写真集「獣愛」に寄せた解説など、幅広い内容。装丁は堀内誠一。
エトセトラ | 加藤郁乎
詩人・俳諧評論家の加藤郁乎による世界文学的小説。瀧口修造が登場したり澁澤龍彦から電話がかかってきたり、実在の人物が時おりカットインしつつ、ピンク・フロイドの「原子心母」が鳴り響き、果てはテレキネシス、UFOが活躍するトリッキーで超現実的な物語。装丁は画家の斉藤和雄。
大鴉 | エドガー・アラン・ポー、ギュスターヴ・ドレ
小説家であと同時に詩人でもあったエドガー・アラン・ポー。「大鴉」はその代表作といえる長篇詩。荘厳な挿画はフランスの画家、ポール・ギュスターヴ・ドレによるもの。翻訳は日夏耿之介、装丁は草刈順。
ドラキュラ・ドラキュラ | 種村季弘
独文学者・評論家の種村季弘が編纂した吸血鬼小説のアンソロジー。ジャン・ミストレル「吸血鬼」、ジュール・ヴェルヌ「カルパチアの城」、コナン・ドイル「サセックスの吸血鬼」、ベレン「吸血鬼を救いにいこう」、ジェラシム・ルカ「受身の吸血鬼」、日夏耿之介「吸血鬼譚」など、15篇の作品を収録しています。装丁は四谷シモン。
悪魔考 神に叛かれた者たち | 吉田八岑
国内における悪魔学の第一人者、吉田八岑が人間心理の正と負を象徴する存在、すなわち神と悪魔について、豊富な資料をもとに歴史的・文献学的に究明した論考集です。悪魔の定義からはじまり、中世ヨーロッパの魔女裁判、異端審問、宗教権力のからくりと教会政治に象徴される歴史の闇を考証。装幀は野中ユリ。
楽しみと日々 | マルセル・プルースト
大作「失われた時を求めて」でも広く知られるフランスの作家、マルセル・プルーストの処女作品。20歳から23歳にかけての青年期に綴られた詩的散文は、どれも瑞々しい印象です。ノーベル賞受賞作家、アナトール・フランスによる序言も併せて掲載。 翻訳は窪田般弥、装丁は堀内誠一 。
薔薇十字の魔法 | 種村季弘
充ち足りた死者たち | ジョイス・マンスール
マゾヒストたち | ローラン・トポール
大坪砂男全集 2巻揃
探偵小説を代表作に持つ日本の作家、大坪砂男の小説集2巻揃。「零人」や「天狗」などの代表作はもちろん、すべての作品を網羅した大全集。あるときは幻想的な推理短編小説、またはシュルレアリスムの色濃い怪異譚、はたまたこちらはコミカルな喜劇、といったように、変幻自在な語り口に引きこまれます。編集・解説には澁澤龍彦 と都筑道夫。装丁は松本杲夫。
吸血鬼幻想 | 種村季弘
黄金遁走曲 | 久生十蘭
探偵小説、冒険小説やノンフィクションノベルなど多彩な作品を手掛けた小説家、久生十蘭 による短編作品集。表題作のほか「生霊」「刺客」「贖罪」「カイゼルの白書」「昆虫図」などを収録。「ノンシャラン道中記」に登場したコン吉とタヌ子の珍道中からはじまる本書は、久生十蘭の著作の中でもテンポ良く読める1冊です。巻末には塚本邦雄による解説、装丁は勝川浩司 。
孤独な色事師 ジャコモ・カザノヴァ | 窪田般弥
1000人の女性とベッドを共にしたといわれた、ジャコモ・カサノヴァの人物評伝。ペテン師、色事師、魔術師、詐欺師、法螺吹きといったカサノヴァに対するイメージは真実なのか。フランス文学者の窪田般弥がカサノヴァ自身の著作「回想録」をもとに、彼の名誉を回復する人物像を浮かび上がらせた1冊。装丁家の記載なし。
マドゥモァゼル・ルウルウ | ジィップ
フランスの作家/ジィップによる戯曲「マドゥモァゼル・ルウルウ」を森茉莉が翻訳したもの。貴族のおてんば娘/ルウルウが自由奔放に繰り広げる日常劇。序文は与謝野晶子。装丁は堀内誠一 。
定本 三島由紀夫書誌
文豪・三島由紀夫 の著書目録や作品目録を編纂した書誌。昭和46年11月25日までにおける著書目録・作品目録の他に、上演目録、関係記事・参考文献目録、年譜・図録、そして詳細な蔵書目録を収録。編集者・島崎博と三島由紀夫の妻・三島瑤子が共同で編纂したもの。装丁家の記載なし。