ひとくちにニセモノといってもさまざまで、たとえばそれが「贋物」「フェイク」「まがいもの」などと聞くとマイナスなイメージを持ちがちですが、「コピー」「模写」「再現」「パロディ」はどうでしょう。いまやコピーされたもので十分事足りる状況があらゆる環境で整い、さらにいえばコピーでしかなりたたない事柄・行為がわたしたちの生活を取り巻いています。はたして本当にオリジナルこそが正統で、プライオリティが高いものだと言えるのか?




考古学における石器のコピーや捏造、かの有名な赤瀬川原平の模造千円札事件、動物の擬態やカッコウの托卵、そして我々人間の遺伝を司るDNAの仕組みなど、歴史上に無数に存在する様々な真贋の事例を前に、自分のなかの常識が歪んでくるのがわかります。こうして見ると真と贋の境界線のいかに曖昧なことか。

ほかにもロンドン、ストックホルムなどでも制作されたこの「大ガラス」は、レプリカであると同時にオリジナルでもあるという革新的な作品でありながら、オリジナルが複数個存在している作品ともいえるのです。さすがレディ・メイドの生みの親。
すべてを疑ってかかり疑心暗鬼になりすぎるのもあまり身体によくなさそうですが、創作者に敬意をはらいつつ、こうした歴史を紐解くことによって、また新たな視点で本物とニセモノを捉え直すことができるのではないでしょうか。