「青写真を描く」とは、計画を練るの意。語源となったサイアノタイプ(日光写真)がかつて機械図面や建築図面をコピーするのに重宝されたことから、将来計画などを指す言葉としても使われるようになりました。
イギリスの植物学者であり、写真家であったアナ・アトキンス。写真がはじめて挿入されたと言われる『Photographs of British Algae』を1843年に出版したことで、植物写真のパイオニアとしても知られています。
本書『Sun Gardens: Cyanotypes by Anna Atkins』で用いられているのが冒頭でも触れたサイアノタイプ(日光写真)で、これは薬品と紫外線の化学反応を利用して印刷物にものの影を写し取る古典技法のひとつです。化学反応によって美しい青の濃淡が生まれることから、青写真とも呼ばれました。
押し花のように平面的に配された藻類や植物は、まるで永遠の美を閉じ込めたかのような幽玄さすら感じさせます。
すべてを飲み込んだ青が、植物を深い海の中をただよう生命や、顕微鏡の上でみる雪の結晶、はたまた青く燃え上がる炎のようにも見せる不思議。
血管のごとく張り巡らされた葉脈や、光を通して透き通るほどの葉の薄さ、まるで人工物のように緻密で繊細なかたちに、わたしたちがまだ知らぬ植物の姿を見ることができるはずです。
いまではあまり馴染みのないサイアノタイプですが、時折ワークショップなども開催されており、薬品は一般的にも入手可能なものだそう。自分の手でもこんな神秘的な世界が作り出せるかもしれないと思うと、胸が膨らみますね。