ワイズベッカーの取材日記しかり、エットレ・ソットサスのドローイングしかり、どうやら私は製図、デッサン、メモ、スケッチといったが類が好きらしい。
レイチェル・ホワイトリードが作品制作で主に使用するのはキャスティング(鋳造)という手法で、たとえば椅子やテーブルの下、バスタブの内側といった本来凹として存在する空間を、レジンやゴムといった素材で物質化したものが知られています。
1993年にはロンドンのイースト・エンドに佇むテラスハウスの内側をコンクリートでキャスティングした作品を手がけ、同年にターナー賞を受賞しその名を広めました。
本書「Rachel Whiteread Drawings」には、ドローイングや、ときにはコラージュをもちいて表現されたデッサンの数々が収録されています。
方眼用紙の目に正しく収められることで単純化したかたち、描かれた用紙の色や質感、ニュアンスも、ドローイングの魅力を構成する大事な要素のひとつ。そして物体の「空白・余白」を、氏が計算・想像する過程も垣間見ることができる点もとてもおもしろい。
そして彼女の立体作品に強く惹かれた方は、巻末に掲載されている「ヴィジュアル・エッセイ」もたまらないのでは。
靴の木型に、化石、石膏彫刻のかけら、様々な素材で作られた匙など、彼女の手によって集められた様々なオブジェクトのどれもに、作品制作のもととなった発想・視点が確かに感じられるかと思います。