一番見るのが楽しみなのは、はやり妻であるイーダを後方から静かに見つめた作品でしょうか。表情が見えないことからくる不穏さや不安さは感じられず、そこに漂うのはむしろ愛情に満ちた柔らかな眼差し。不思議な安心感と静かに透き通った空気に包まれて、そこに流れる穏やかな時間や生活をつい想像してしまいます。この作品と鑑賞者との絶妙な距離感も、ハンマースホイ作品の魅力のひとつ。あぁ、早く展示を見ながら生の気配を感じたいなぁ。本書で代表作や氏の私生活、そして同時代に活躍した画家などを予習しながら、開催の日を待ちたいと思います。