世の中には理解できないことが沢山あると知れば知るほど、ひとは足元に転がっている不思議に対して鈍感になってしまうのかもしれません。
松岡正剛の千夜千冊でも、大人の問いついて「Q&A、Q→A、Q→Aばかり。ここにはA→Qがない。」と述べていますが、あぁまさにその通りかもなぁと。
本書『デザインの自然学』は、あらゆる事実のなかに無限に横たわるQを、私たちに提示してくれる一冊。動植物のかたちから宇宙の秩序まで、世界のあらゆる物事・事象はある比例パターンに基づいてるとした上で、グラフや写真、イラストレーションを用いて証明していきます。
その普遍的な比例パターンは本書内では”ディナージー”と呼ばれていて、これはギリシア語の“dia”(越える・通り抜ける・対比する)と“energy”(エナジー・エネルギー)を合成させたもの。ちなみに著者による造語です。すごい。
様々な形をした魚も、黄金分割と3:4:5のピタゴラス三角形によって表すことができる不思議。雪の結晶が、ひとつのパターンを12回繰り返した模様をしている不思議。背や男女など、違いのある人体のプロポーションに統一性がある不思議…
なんだかこうしてみると、宇宙全体が何者かによる調和の取れた作品のようだと思いませんか。神の意志すら感じるというか。
長年建築に携わった著者だからこそ見いだせた原理や秩序、パターンから生まれる美。一見難しそうですがまずは身構えず、思いがけない驚きを純粋に味わっていただけたらと思います。