人類の”知りたい”という欲求は、こうも尽きることがないのでしょうか。東京大学総合研究博物館の展示を見るたび、人間の飽くなき探究心には心底驚かされます。
2012年に同博物館で開催された「アルケオメトリア 考古遺物と美術工芸品を科学の眼で透かし見る」も、まさに人間の知的欲求の結晶ともいえる展示。
考古遺物や美術工芸品を、放射性炭素年代測定法、X線CTなどの最先端の科学分析法を用いて調査することにより、何をどこまで明らかにできるのかを紹介しています。
頁をひらけば、読者はみな科学の目を手にしたも同然。
想像してみてください。わずか千分の一グラムの炭素さえあれば、おおよその暦年代を解析できてしまうんですよ。これまで目にしていた世界の解像度がぐっと上がるような気持ちになりませんか。
たとえば、CT画像で火炎土器も丸裸。器面と文様との隙間がどれだけ空いているのかで、この土器がどのようにして作られたのかという工程を探ることができるのです。レプリカ電子顕微鏡を使えば、土器のなかに混ざった0.1mmほどの繊維の形状まで、はっきりくっきり。
教科書で学んだことは決して当たり前ではなくて、今後科学の発展によっていかようにも覆され得るもの。未来同様に、はるか遠い過去の遺物のなかにも、まだまだ未知の世界が広がっているのです。わくわくしますね。それを何歳になっても面白がりたい方のための、最高の一冊だと思います。