カンディンスキーの作品をみていると音楽が聴こえる。そして音楽を聴いてふと、カンディンスキーの絵が浮かぶ。それもそのはず。氏は、常に音楽を意識しながら作品づくりをしてきた画家だったからです。
小さい頃からピアノやチェロなどの楽器を習っていたカンディンスキーですが、抽象画家となったきっかけのひとつも、やはり音楽でした。風景画を多く描いていた時期に、作曲家、アルノルト・シェーンベルクのコンサートを聴いて感動し描いたのが、「印象Ⅲ(コンサート)」。音という目に見えないものを、色と形で表現したその作品が、カンディンスキーの抽象表現のはじまりで、世界中で描かれている抽象画の先駆けだったのです。
こちらの作品集は、ベルリンの分離派展に出品した1902年の作品から、亡くなる直前に制作した作品までを網羅した見応えのある一冊。年代順に掲載されているので、作風の移り変わりを感じることができます。
初期の風景や人物など実体のあるモチーフを描いた作品から、1911年頃の抽象画への変化。バウハウスで教鞭をとっていた時代の構成主義の影響を受けた作品、そして晩年の曲線を使った生命の形のような作品への移り変わり。
作風は変われど、切っても切り離せない存在だった音楽は、ひとつひとつの作品に染み込んでいます。ぜひカンディンスキーの一生を辿りながら、作品が奏でる音楽に耳を澄ませてみてください。