植物学者だからこそ持ちえる視点と、写真家だからこそ成し得る表現。今回紹介する『Karl Blossfeldt: Die Arbeitscollagen
』は、その2つがもっとも美しいかたちで融合した作品といえるのではないでしょうか。
1920年代にかけて興った新即物主義といえば、主観的ともいえる表現主義に反抗するかたちで広まった、冷静・冷徹・非人間的とも表される芸術運動のこと。本書の著者であるカール・ブロスフェルトもそれを代表する人物のひとりですが、彼の手掛ける作品からは、植物と向き合った瞬間の、感動で震える心の機微を感じざるをえません。
植物の持つかたちの美を自らの手で引き出さんとする意図が、レイアウトの隅々から感じられるのです。
「葉の先がくるんと巻いた植物」「花弁が多く密集した植物」「古代の塔のようにそびえ立った茎を持つ植物」…
同系統ごとにまとめられることで、自ずと観るものの意識は植物がもつ「かたちそのもの」に引き寄せられていきます。
タイポロジー的な切り取り方も美しい。驚きと感動を静かに噛み締めながら、じっくりと味わいたい一冊。