アート作品集や美術展図録など、アートにまつわる書籍をご紹介
2016.11.15 アート

すべては目と心の娯しみのために。博物学者が創造した図像の世界「ファンタスティック12 シリーズ」

すべては目と心の娯しみのために。博物学者が創造した図像の世界「ファンタスティック12 シリーズ」
こんにちは、なつきです。

単なる説明や写生ではなく、目の娯しみや歓喜・興奮を生み出す表現として生まれた、図像。そこに描かれたのは、大脳の内側に広がる壮大なパノラマ。本日は、17世紀〜19世紀のいわゆる”図像の黄金時代”に博物学者たちが残した膨大な資料を研究・編集した「ファンタスティック12 シリーズ」をご紹介します。

「ファンタスティック12」では、自然界の生物や科学、そして人間の想像によって生み出された生物など、未知への好奇心を刺激するテーマが豊富な図版とともに解説されています。これら12篇のシリーズを編集するのは、博物学者や図像学研究家にはじまり、小説家、妖怪評論家などなど、その博学から多方面で活躍する荒俣宏著書である「世界大博物図鑑」制作の際には、資料費として1億円以上の借金をつくってしまったというから、その探求意欲には驚きです!今回はシリーズの中から、ノストスで人気の3作をピックアップしました。

水中の驚異

「ファンタスティック12」シリーズの第1作目として刊行された『水中の驚異』。陸上と違い、そこに住む生物を観察することが難しい海の世界。当時の人々は、まさか暗い海の底にこんなにも色鮮やかな世界が広がっているなんて思いもしなかったでしょうね。初めてその姿を目にしたときの感動や驚きもひとしおだったはず。

fantastic_05 まるでレースのカーテンのようにふわりと揺れる触手、宝石のように青く光るコウイカにヒカリボヤ。この色使いやレイアウトから見ても、博物学者たちが目の前の生物を描写するだけではなく、その美しさをいかに表現するか模索していたことは明らか。というより、彼ら自身も当初はその美しさに、これが生物だとは信じられなかったのかも。

fantastic_03 そしてさらに面白いのは水の描かれ方。水中の生物を描くということは、刻々と変化する水も同時に描かなくてはいけないわけです。初期の水中画では、まず全体に薄く水色を流し、描きたい対象物自体には透明な水を重ねることで、ぼんやりと水色の煙る背景に水中生物が浮かび上がる不思議なモザイク模様ができあがりました。「水の中にいる生物を描くなら、実際に水被せちゃえばいいじゃん」ってことですね。潔い。

fantastic_18 こちらでは黒を背景に用いることで深海を表現しています。当時におけるこの画期的発想は、おおむね20世紀に生み出されたもの。特にA・アンドレスが描いた石版図の迫力は他に比較するものがないほどで、暗色背景を芸術にまで高めたとも称されています。

ファンタスティック12 第1巻 水中の驚異

ファンタスティック12 第1巻 水中の驚異

著者
荒俣宏
出版社
リブロポート
発行年
1991年
荒俣宏編著、ファンタスティック12シリーズ第1巻/水中の驚異編。イソギンチャクやウミウシなど、奇怪な装いの生物たちを過去の論文や図譜から編纂した水中生物のカラー図鑑。装丁は鈴木成一。
自然界の驚異を描いたシリーズでは、昆虫の持つ色や柄の美しさを再発見できるこちらもおすすめです。

マリア・シビラ・メーリアンの「スリナム産昆虫の変態」、ゲオルグ・ディオニシウス・エーレトの「花蝶珍種図録」、モーゼズ・ハリス「オーレリアン」。これら18世紀蝶類図鑑の傑作3冊の図録を贅沢に編纂。
ファンタスティック12 第8巻 昆虫の劇場
またこちらでは様々な分野における図像表現を網羅しつつ、西洋の近代版画についても解説されています。

思慮を促す「観賞」としての現代の芸術的版画と、物を語り、見る側がいわば「観光」するようにそのものの情報を受け取ってきた17〜19世紀の西洋銅版画。本著では後者の「読み方」を荒俣宏が解説する。
図像観光 近代西洋版画を読む

解剖学

これぞ、”絵画的幻想の真打ち”と荒俣氏が綴っているように、当時の解剖図譜の表現はとにかく奔放・自由。だって見てください。

fantastic_07 こちらのモデルの女性、皮膚がめくれているのに笑っちゃってる。正確な写生・描写をしようとしたのであれば、まずありえないですよね。

fantastic_06 アルビヌス「人体筋骨構造図譜」より。今度はポーズまでばっちりきめてます。
しかし、このような表現にはれっきとした理由があって、人体は神の作り出した傑作であると考えられていたことから、最美の形として描かれなくてはならなかったからだそう。
人体をより際立たせるためには背景となる影が必要だと考えたアルビヌスは、ただ影を斜線で描くだけでは芸が無いので、生や死を表現する題材を描き入れたんです。その結果、解剖図がこんなにも神々しい感じに。また、ヴェサリウスが解剖した身体は彫刻家たちの手本としても使われていたことから、まるでギリシャ彫刻のようなポーズを取った解剖図になったのだとか。

fantastic_08 fantastic_16 一方こちらは日本の解剖図。うぅ、グロテスク…。日本の表現は、あくまで解剖した肉体をありのまま描くことを重要視していたのだと感じさせますね。こういった西洋との対比も面白い。

ファンタスティック12 第11巻 解剖の美学

ファンタスティック12 第11巻 解剖の美学

著者
荒俣宏
出版社
リブロポート
発行年
1991年
荒俣宏編著、ファンタスティック12シリーズ第11巻/解剖の美学編。「彩色解剖図譜の驚異」「諧謔と鮮烈の江戸腑分け図」「現像の十八世紀解剖図譜」の3部構成で、その細部にわたる描写はまさに第二の解体新書。装丁は鈴木成一。

怪物学

実在するものの神秘や驚異とは異なり、反自然の存在に迫ったのがこの『怪物学』。とはいえ意外や意外、実は怪物学は、「その時代の人々にとって、なにが例外的な存在とされてきたのか」という精神史と深く結びついているんです。
初期に描かれていた怪物は、「異常」や「例外」、または「異兆」といって災害や災いを予兆するものとして描かれていました。その後、新大陸の探索や発見が進むと、「遠方生息怪物学」という未開拓地に住む未知の生物という考え方も広がっていきます。

fantastic_10 こちらの生物なんて、現代人からすればどう見てもサイ。でもはじめてサイを発見した人は驚いただろうなぁ。強固な胴体に角まで生えた生物なんて、得体の知れない怪物そのものだったことでしょう。

fantastic_19 fantastic_11 こちらはゲスナーによる怪物図。神話に登場する7つの人面をもったヒュドラと、船を襲う鯨が同じように怪物として描かれています。鯨と同様に、獰猛な生物として考えられていたシャチの生体が明らかになるのが、これらの絵が描かれてから約250年後であったというから、世界がいかに未知と驚異に溢れた時代であったか想像できますね。

ファンタスティック12 第12巻 怪物誌

ファンタスティック12 第12巻 怪物誌

著者
荒俣宏
出版社
リブロポート
発行年
1991年
荒俣宏編著、ファンタスティック12シリーズ第12巻/怪物誌編。反自然の存在として人間が作り上げ、語り継がれてきた世界各国の怪物たち。本書では、自然界の「異常」として、また災害を予兆する「異兆」としての正体を追求する。時に妖しく、時に愛らしい怪物たちの図像もカラーで多数収録。装丁は鈴木成一。
一方こちらは人類が創造した数々の空想上の生物、"幻獣"が収録されている一風変わった図鑑。

幻想的な作風で知られる作家/ホルヘ・ルイス・ボルヘスと、その友人/マルガリータ・ゲレロによる図鑑。ケンタウロス、一角獣、チェシャ猫など、人類が創造した東西古今の120の空想上の生物を集成。イラストは鈴木康司、造本は平野甲賀。
図像観光 近代西洋版画を読む
多大な想像力と表現力を費やし、見る人々の目を楽しませ続けた表現、図像。それらの放つ魅力は、様々なエンターテイメントで目の肥えた現代人が見ても衰えることはありません。
荒俣先生のお言葉のとおり、全身を目玉にしていざ図像の世界へ! こちらのコンテンツもおすすめです。

特集コンテンツ
図鑑と博物誌:眼を喜ばせ、脳を驚かせる知的観光遊覧
宇宙の神秘、生物の不思議、路上の光景…etc。大人になっても好奇心をそそられる図鑑や博物誌をあつめました。

スタッフ日記 | おすすめ書籍
大人が楽しめる図鑑。想像力をかきたてる美しい博物誌
クラシックな図板をふんだんに掲載しているものを中心に、大人がたのしめる図鑑または博物誌をまとめてみました

想像力を鍛えよう。情報の渦に飲み込まれずに生きるには?
スタッフ日記 | おすすめ書籍
想像力を鍛えよう。情報の渦に飲み込まれずに生きるには?
目が驚く世界。情報過多の現代において、想像力を養い、人生をより面白くさせるための一冊をご紹介。
  • Facebookでシェア
  • Twitterでシェア
  • はてなブックマークに追加

この記事をシェアする

ニュースレターご登録はこちら
最新の入荷情報や展示イベント、おトクなキャンペーンなどをニュースレターでいち早くお届けします。詳しくはこちら

送信内容を確認後、チェックを入れてください

お支払い方法について

  1. クレジットカード決済

    VISA、MasterCard、JCB、Amex、Dinersがご利用いただけます。分割払いも可能です。
  2. コンビニ決済

    ご注文後、発行される払込番号をコンビニにお持ちいただきお支払いください。手数料は無料です。
  3. 後払い決済

    お支払前に商品を発送いたします。別送の請求書をお近くのコンビニ・郵便局・銀行にお持ちいただき、お支払いください。手数料として別途250円を頂戴いたします。
  4. 代金引換決済(着払い)

    到着時にドライバーに現金でお支払いください。手数料として別途350円を頂戴いたします。
  5. その他、銀行振込、Paypal決済もご利用いただけます。
    詳しくはこちら

送料・配送について

  • ・日本郵便ゆうパックにてお送りいたします。
  • ・送料は全国一律500円。
  • ・お買い上げ商品代金の合計が10,000円以上で送料無料。

お届け日の目安

営業日の正午12時までに確定したご注文につきましては当日中にご注文商品を出荷させていただきます。

なお、到着ご希望日が数日先に設定されている場合、ご注文の確定(ご入金の確認)がなされていない場合、またご注文内容について何らかの確認をさせていただく必要がある場合などは、上記の出荷に関するお約束に適用されませんのでご理解の程お願い申し上げます。何らかの理由で発送が遅れる場合はその旨ご連絡いたします。

返品・返金について

当店で取り扱うすべての商品で返品・返金に対応させていただきますので、安心してお買い物をお楽しみいただけます。返品をご希望の場合には、商品到着後7日以内に当店宛てにご連絡ください。
詳しくはこちら

送料・配送について

info@nostos.jp
03-5799-7982

公式SNS

運営会社

株式会社NEU(ノイ)
東京都公安委員会許可 第303251508268号
© nostos books All Rights Reserved.