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おんなを描くことにこだわった天才絵師・上村一夫の世界
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おんなを描くことにこだわった天才絵師・上村一夫の世界

中野です。
漫画って実はいろいろなことを教えてくれる、人生の教科書といっても良い名作がたくさんありますよね。 個人的にもいろいろ漫画を読みますが、古いところでちば先生のキャプテン、みなもと太郎先生の風雲児たち、最近だとキングダム、ブルージャイアントなど、人生に迷ったら読むべき漫画リストは日々更新されています。

本日は、どこか心に残る絵を描く漫画家といえばこの人、ということで天才絵師・上村一夫をご紹介します。



リリシズム 上村一夫の世界 | 上村一夫

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「同棲時代」より

同棲時代という作品をご存知でしょうか?1972年に刊行されたこの漫画は当時大人気となり、映画化ドラマ化され、まだ社会的認知されていなかった同棲というものを世に広めたきっかけといわれています。神田川なども同じ時代。70年代の若者にとって、共感を覚える新しいライフスタイルだったのかもしれません。

この作品の作者である上村一夫 は、イラストレーターから漫画家へ転身し、竹久夢二を連想させるような物憂げな女性像と独特の劇画タッチを確立した漫画家です。

本書は、丁寧な作品解説や原画なども掲載しながら、誕生から逝去までを時系列で並べ、上村一夫の仕事を俯瞰できる内容で、ファンのための本でもありながらも、上村一夫を知らない方の入門編としてもおすすめできる一冊です。

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「すみれ白書」より

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「サチコの幸」より

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「同棲時代」より

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「狂人関係」アイデアスケッチ

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1973年「修羅雪姫」

blog_20161012_09 下絵や原稿なども多く掲載されており、資料性も非常に高い内容。

個人的に僕が上村一夫を知ったのも、この本でした。この類まれな才能を持った漫画家と、彼の描く女性像に惹かれ、「修羅雪姫」「同棲時代」「しなの川」などといった作品を一気に読み漁り、すぐファンに。哀愁漂う女性の表情がいつまでも心に残り、どこかに実在しているような錯覚さえ覚えます。

リリシズム

リリシズム 上村一夫の世界

著者
上村一夫
出版社
まんだらけ
発行年
2011年
「ヤングコミック」、「週刊プレイボーイ」、「ビッグコミック」など多くの連載を手がけ、竹久夢二を連想させる作風から「昭和の絵師」とも呼ばれた上村一夫の全貌を網羅した資料集。氏の生い立ちや作品を時系列を追って紹介するとともに、手がけたイラスト、装幀、レコードジャケット、漫画、雑誌といった作品をカラーで多数収録。

離婚倶楽部 上下巻

blog_20161012_18 1974年当時、一巻のみ発売されただけで単行本としては未刊のままになっていた本作を、40年の時を経て、上村一夫ビブリオテークが上下巻セットの完全版として刊行したもの。離婚歴があり、女手ひとつで娘を育てる主人公・夕子が銀座の小さなクラブを舞台に繰り広げる、なんでもない日常と人間模様を淡々と描いた名作です。

映画でも小説でも、物語として大きな動きがない、しかしながら主人公の心の移ろいを丁寧に描いた作品というものに、なぜか心惹かれます。この離婚倶楽部もそんな作品の一つ。 上村一夫の詩情溢れる絵は、平凡な物語もまるで映画のように輝かせます。

blog_20161012_12 夜のおんなのたくましさと心に秘めた哀しさを、丁寧に描きます。一コマ一コマの表情や、随所に出てくる連続したコマ割りと俯瞰した構図は映画を見ているような気分になります。

blog_20161012_17 blog_20161012_15 blog_20161012_14 バーテンダーの健ちゃんと別れた旦那の間で揺れ動く女心や、小さな我が子を母に預けて夜の世界で生きていく決意など、物語はあくまで淡々とした日常。だからこそリアリティがあります。銀座に行ったら会えるんじゃないかと思うぐらい。

読んでいるうちにすっかり好きになってしまった、主人公・夕子の年齢設定は25才だということに後で気がつきました。70年代あたりと2016年の現在では、年齢の違和感がかなりありますね。当時の25歳は今の35歳ぐらいの差を感じます。 今の時代にここまで哀愁漂う25才はいないのでは?

本書は通常版と特装版の2バージョンありますが、こちらは布張り特装版。内容だけでなく造本も含めてお楽しみ頂けます。

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離婚倶楽部 上下巻

著者
上村一夫
出版社
まんだらけ
発行年
2011年
「ヤングコミック」、「週刊プレイボーイ」、「ビッグコミック」など多くの連載を手がけ、漫画家、イラストレーター、エッセイストなど幅広く活躍した上村一夫の漫画。銀座の小さなクラブを舞台に、離婚歴があり女手ひとつで娘を育てる夕子の日常を描く物語の上下巻セット。特装版。
青年コミック、週刊少年マンガ、週刊誌や女性誌など、多岐に渡るジャンルと膨大な量の仕事をこなし、数多くの作品を残した上村一夫ですが、わずか45歳で急死してしまいます。 ですが、上村一夫の残したおんなたちは、誰かの心の中で生き続けているように思います。僕の中の夕子のように。

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ノストスブックス店主。歴史と古いモノ大好き。パンク大好き。羽良多平吉と上村一夫と赤瀬川原平と小村雪岱に憧れている。バンドやりたい。