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写真で見るビートニク詩人たち。ビート・ジェネレーションが作り出したカウンターカルチャーの源流
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写真で見るビートニク詩人たち。ビート・ジェネレーションが作り出したカウンターカルチャーの源流

中野です。

ビートニクやビート・ジェネレーションという言葉を聞いたことがあるかもしれません。なんだかカッコイイ響きですよね。今から50年も昔の出来事ですが、詳しく調べていくとその後のロックやヒッピー文化といったカウンターカルチャーの大きな流れを少し理解できるかも?

今回は当時のファッションやカフェの雰囲気、街の様子といった貴重な写真の数々を眺めながらご紹介してみようと思います。



ヒップスターの登場と中心人物たち

blog_0629_05 1950年代のアメリカは第二次世界大戦を終え、豊かな経済発展を謳歌していた黄金時代。そんな初めから与えられていた人生に反発し、自分で自分の人生を決めることを求めた若者たちがいました。

blog_0629_06 blog_0629_07 blog_0629_16 中心人物は、「オン・ザ・ロード(路上)」を書いたジャック・ケルアック、詩集「吠える」を発表したアレン・ギンズバーグ、小説「裸のランチ」のジャンキー作家ウィリアム・バロウズの3人。

保守的な当時のアメリカの体制に異を唱え、言葉を武器に個を貫くことを求めた思想・運動をビート運動、その活動に関わった世代はビート・ジェネレーションと呼ばれました。親世代であるヘミングウェイやフォークナーたち作家をロスト・ジェネレーションと呼んだことからジャック・ケルアックが命名したと言われています。

blog_0629_24 ジャック・ケルアックとロバート・フランク。

blog_0629_21 アレン・ギンズバーグの詩集「吠える」の冒頭に「天使の顔をしたヒップスターたち」という一節があります。「本当のフィーリングを持った者」という意味で使われ、ヒッピーの語源になった言葉です。彼らを中心に広がった思想や生き方は、世界中の若者たちに熱狂的に支持されました。

ラップの源流、ポエトリーリーディング

blog_0629_09 ビートニク詩人たちは教会やカフェなどで自作の詩を朗読する、ポエトリーリーディングという活動を開始します。もともとは黒人たちによる人種差別に対しての抗議という形で始まったと言われています。

blog_0629_10 blog_0629_11 blog_0629_12 blog_0629_13 blog_0629_14 blog_0629_15 社会に対する問題提起や人種問題、感情や信念を言葉にして発表するというシンプルな朗読スタイルは、徐々に音楽に乗せたり演劇の要素を取り入れたりと、パフォーマンス性も重視されることで総合芸術として成熟していきました。ボブ・ディランやドアーズのジム・モリソンなどのミュージシャンにも多大な影響を与え、のちのラップに繋がっていきます。

ビートニクたちが愛したジャズ

blog_0629_02 チャーリー・パーカーやセロニアス・モンク、マイルス・デイヴィスが活躍したビバップ〜ハードバップ時代のジャズもまた、スウィングジャズのマンネリから脱却し、新たな変革の時期を迎えていました。ミュージシャンたちは一瞬の閃きを重要視したアドリブを取り入れることでモダンジャズという新たなジャンルを作りあげます。

blog_0629_04 50年代前半といえばまだロックが主流になる以前の時代。ジャック・ケルアックやアレン・ギンズバーグが夜な夜な通ったクラブでのジャズメンたちの反発精神旺盛なプレイは、ビートニクの思想・嗜好とぴったりとかみ合います。

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ビートニクの聖地、シティライツブックストア

blog_0629_08 ローレンス・ファリンゲティ が1953年に創業したサンフランシスコの伝説的書店シティライツブックストア(City Lights Bookstore)は、アレン・ギンズバーグの「吠える」やジャック・ケルアック「路上」の版元として世界的に有名になりました。自身も詩人として当時から活動し、ビートニク詩人の聖地として現在も変わらぬ存在感を保ち続けています。本屋なら一度は行かねばならない書店の一つですが、いまだ未訪問。。

blog_0629_22 blog_0629_23 詩を朗読するローレンス・ファリンゲティ。

blog_0629_18 ゲーリー・スナイダーの若かりし姿。キアヌ・リーブスみたい。

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Beat Generation

著者
Fred W. McDarrah、Gloria S. McDarrah
出版社
Schirmer Books
発行年
1996年
ジャック・ケルアックやアレン・ギンズバーグ、ウィリアム・バロウズなど多くの作家が傾倒していたビートニクをフレッド・マクダラーが記録した写真集。
世界中の若者たちに影響を与えたビートニクの活動は、その後のヒッピー文化に繋がります。

社会や制度を否定し、個人の魂の解放を訴えた主張の大元にあるのは、「人に決められたレールには乗らず、自らの人生を切り開くことを追い求める 」ということ。普遍性を持ったテーマだからこそ、50年経った現在でも輝きを失わないのかもしれません。

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ノストスブックス店主。歴史と古いモノ大好き。パンク大好き。羽良多平吉と上村一夫と赤瀬川原平と小村雪岱に憧れている。バンドやりたい。