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ダダイズムの世界。あらゆる既成概念を破壊した芸術運動とダダイストたちの作品

中野
書いた人:
2016.3.23 アート
ダダイズム
こんにちは、中野です。

ダダイズム 」という芸術運動を知ってますか?ダダともダダイスムとも呼ばれます。ノストスブックスにもたくさんの関連書籍があるのですが、シュルレアリスムとダダイスムって何が違うの?仲間?別物?ということは、正直ほとんど理解していませんでした。個人的にコラージュを作っていたので、コラージュ=シュルレアリスムという認識でいましたが、詳しく調べてみると、思想として面白いのは断然ダダだ!という結論に至りました。

ダダイスムは、第一次世界大戦中の1916年、スイス・チューリッヒで起こります。フランスの詩人・トリスタン・ツァラの「ダダ宣言」は世界中の芸術家の賛同を得て、チューリッヒ・ダダ、ベルリン・ダダ、ニューヨーク・ダダなど世界中に同時多発的に飛び火し、多くの影響を与えました。日本にもダダは飛び火しています。

調べれば調べるほど、歴史好きの血が騒ぐ1910年代〜20年代の芸術史の流れ。ダダや構成主義といった芸術運動が盛んになり、ドイツではバウハウス、オランダでは抽象美術デ・ステイル様式が盛り上がり、ロシア革命を挟みつつ、アヴァンギャルド(前衛芸術)の時代が到来します。熱い!

とても面白いこのあたりの流れ、終わりなく話せますが(勉強したから!)、一旦落ち着いて今回はダダイズムに属する芸術家たちダダイストの作品を紹介していきます。



ダダイストを知る入門編

ダダイスム

ダダイスム

著者
ディートマー・エルガー
出版社
タッシェンジャパン
発行年
2006年
ディートマー・エルガーの著作。ダダイストたちの挑発的反芸術作品をカラーで多数掲載。
ハンス・アルプ、ラウル・ハウスマン、ハンナ・ヘッヒ、ジョン・ハートフィールド、クルト・シュヴィッタース、マックス・エルンスト、マルセル・デュシャン、マン・レイ、フランシス・ピカビアといった、ダダイストの作品を1つづつ丁寧に解説した良書です。

ダダイスム フランスの彫刻家、画家、詩人ハンス・アルプ。偶然の法則に従って配置したコラージュ。12枚の色紙から正確な直角のできないように四角形を切り出し厚紙に置き、配置からインスピレーションを得た作品。制御不可能な偶然による創作方法というものをダダイストたちが積極的に使ったことで、のちのシュルレアリスムにつながります。妻であるゾフィー・トイバーもダダの中心的人物として活躍しました。

ダダイスム ニューヨーク・ダダのメンバーの一人フランシス・ピカビア。作品のスタイルがめまぐるしく変わったことでも有名なピカビアの機械の時代(ダダの時代)の作品。左図の「ダダ運動」では、芸術的エネルギー供給を図式で表現しています。

ダダの魂

The Dada Spirit

The Dada Spirit

著者
Emmanuelle De L'Ecotais
出版社
Editions Assouline
発行年
2002年
特定のスタイルを持たず、ひたすらに反抗のみを追求したダダの魂を、豊富な作品資料と併せて振り返る一冊。
本書は、ダダの中心的人物の作品が組写真がずらりと並ぶ作品集。この組み方にも何か関連意図があるのでしょうか。そこまでは読み取れませんでしたがもっと詳しい人が見ると、また新しい発見があるのかもしれません。

 ダダイズム作品 左はピカビア、右はニューヨーク・ダダの中心的人物、マルセル・デュシャンの有名なレディメイド路線のもの。モナリザの複製画にヒゲを描き加えて「髭を剃られたL.H.O.O.Q.」とサインしただけ。泉もそうですが、このアプローチを作り上げたデュシャンが当時芸術界に与えた衝撃は凄かったんだろうな。

ダダイズム作品 若かりし頃のマックス・エルンスト。イケメン。ハンス・アルプと共同でダダの雑誌も出版しています。マックス・エルンストってシュルレアリスムの人だと思ってましたが、ダダにも参加していたのですね。想像力の飛躍のために多くの造形プロセスを発明するなど、実験的作品が多く残されています。

ダダイズム作品 フランスの詩人アンドレ・ブルトン。この頃はツァラと行動をともにしていましたが、のちに決別してシュルレアリスム宣言によって新たな芸術活動に進みます。

政治によりそうダダイスト

Zeitausschnitte Fotomontagen 1918-1938

Zeitausschnitte Fotomontagen 1918-1938

著者
John Heartfield
出版社
Hatje Cantz
発行年
2009年
ドイツ/ベルリンのダダイスト、ジョン・ハートフィールド(John Heartfield)の作品集。
ベルリン・ダダの創立メンバー、ジョン・ハートフィールドのフォトモンタージュの特徴は、政治風刺。「新しい政治問題は、新しい政治宣伝の方法を必要とする。そのためには、写真はもっとも強力な力を持っている」と言い、フォトモンタージュで、ナチス批判を続けました。あまりにも強烈な風刺に、ナチスが彼の家まで襲撃に来たところを間一髪窓から脱出して逃げた、という逸話があるほど。

ジョン・ハートフィールド作品 コラージュの素。ヒトラーだらけ。これは狙われるわ。

ジョン・ハートフィールド作品 水を撒いて兵隊を育てている風刺画。ユニークな要素も風刺にはかかせません。

ジョン・ハートフィールド作品 金と権力にまみれているという風刺。すごいメッセージですね。

ジョージ・グロスと2人で実験中にフォトモンタージュという手法を産み出したと言われていますが、いろんな人が自分が最初だと主張してるようです。

独自の美学を貫く女流芸術家

The Photomontages of Hannah Hoch

The Photomontages of Hannah Hoch

著者
Hannah Hoch
出版社
Walker Art Center
発行年
1996年
フォトモンタージュの創始者のひとりとしても知られるダダイスト、ハンナ・ヘッヒの作品集。
ハンナ・ヘッヒは、恋人のラウル・ハウスマンとともにベルリン・ダダのメンバーとして活動し、フォトモンタージュの創始者と言われています。おっとここでも出てきましたよ誰が一番最初か問題。フォトモンタージュは誰にでもできる手法ですから仕方ないのでしょうね。

ヘッヒは他のダダイストたちのような理論家ではなく、あくまでコラージュの中で語るスタイルを貫きます。ベルリン・ダダ唯一の女性という立場がそうさせたのでしょうか?同時にダダイスムの記録や資料を数十年にわたり保存していたことで、今でもこうしてダダイストたちの作品を見ることができているというのも興味深いですね。女性的なユーモアが散りばめられた彼女の作品、個人的に好きなコラージュのタイプです。

ダダイストハンナ・ヘッヒの作品 1922年「我が家のモットー」。コラージュの上からハンス・アルプ、クルト・シュヴィッタースらの手書きの引用文が加えられています。作品の多くにヘッヒ自身の小さな自画像を紛れ込ませています。

ダダイストハンナ・ヘッヒの作品 1923年「大資本家」。モホリ=ナジに捧げられた作品。工具、銃、工場、タイヤなどが組み合わされ、顔は半分に分割され、半分は横向きに。

底知れぬエネルギーの塊

村山知義の宇宙 すべての僕が沸騰する

村山知義の宇宙 すべての僕が沸騰する

編集
村山知義研究会
出版社
読売新聞社
発行年
2012年
1920年代から戦後にわたり、様々な分野の前衛芸術活動を行なった村山知義の図録。
日本の小説家、画家、デザイナー、劇作家、演出家、舞台装置家、ダンサー、建築家の村山知義。この人の熱量と仕事量は半端ないです。「歩きながら手紙を書き、入浴中にも週刊誌を読み、必ず1日一冊以上の本を読み、己の行動を200冊にもおよびスクラップし、それをリソースに自叙伝を執筆し続けた」というエピソードが残されています。底知れぬエネルギーの塊は本書のタイトルそのまま。

1922〜23年にベルリン滞在を果たし、最先端の前衛芸術を思いっきり浴びて帰国、さっそく日本でも前衛芸術を開始します。すぐさま展示会を開き、大正期の新興美術運動を一気に加速させました。何この人。。恐ろしいパワー。。日本の美術史もかなり面白そうですが、まだそこまでたどり着いてません。1910年白樺派〜調べなくては!これはぜひ知らなければいけないやつ。

村山知義 帰国後すぐに前衛芸術グループ「マヴォ(MAVO)」を結成し雑誌を刊行。2ヶ月後に関東大震災。すぐ「バラック装飾活動」という「バラックを美しくするための仕事一切」を引き受ける運動を起こす。もうパワフルすぎて怖い。。

村山知義 自叙伝多すぎる。頭の中が見てみたい。

村山知義 なぜ逆さまなんでしょうか?こういう創作活動って生で見た事ないんですが、なにがそうさせるんでしょうか?

今のところの結論として「村山知義ってなんかすごい」というところでお腹いっぱいになっちゃったので、このあたりはさらに深堀していきたいところ。昔はほんとにアナーキーな人が多かったんですね。
さて、胸焼けするほどのパワーを世界中に投げかけた「ダダイズム」どうでしょうか?やはり戦争というどうしようもない矛盾から抜け出したい、解放されたい、というのが大前提にあるように思います。彼らはこの自己矛盾を芸術に向けました。

「ダダとはなんぞや?」という問いに、付け焼き刃な知識で答えるならば、「あらゆる既成概念を破壊し、個人の欲求を解放する運動」ということに落ち着くのではないかと思います。 はあ疲れた。

ちなみにウルトラマンでお馴染みの怪人ダダもダダ、ダダイズムからネーミングされたらしい。

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中野
ノストスブックス店主。デザイナー。日本史大好き。カレー大好き。パンク大好き。羽良多平吉と横尾忠則と上村一夫と赤瀬川原平と小村雪岱に憧れている。最近は戦国時代にハマり中。そしてマイベスト漫画・風雲児たちがちゃんと終わるのか気になっている。不眠症。NATURE LIVINGのベースだが活動休止中。バンドやりたい。
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