『茶と糧菓』刊行記念展 / 菓子屋ここのつセレクト
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『茶と糧菓』刊行記念展 / 菓子屋ここのつセレクト

nostos booksでは現在、茶と糧菓刊行記念展を開催中です。

東京・浅草鳥越で予約のとれないほど人気を誇る茶寮「菓子屋 ここのつ」を主宰する溝口実穂と、茶道や中国茶文化に造詣の深い陶作家で「ギャルリ百草」(岐阜・多治見)を営む安藤雅信が、季節ごとの茶寮にあわせて、新作の茶器を制作し、記録した『茶と糧菓』。
こちらの書籍の刊行記念展にあわせて著者の「菓子屋ここのつ」溝口実穂さんにノストスの蔵書から選書していただきました。

溝口さんならではの選書をお楽しみいただけたらと思います。

『茶と糧菓』 P.18

利休形 茶道具の真髄・利休のデザイン | 世界文化社

日本のプロダクトデザインの原点といわれ、茶室で客をもてなすために作られた利休形の茶道具を集成した『利休形 茶道具の真髄・利休のデザイン | 世界文化社』。

溝口「形が無駄がない形で、理にかなっている。さすが利休…。と思って、器など作り手の方とコレボレーションして作る時など要所要所で参考にしてます、この本。この『茶と糧菓』の1ページにも利休箸が載っていて。簡単に言ってしまうと、神様が食べる方と、自分が食べる方。自分と神様の領域における結界がこのお箸と考えていて。安藤さんとそういったことを話しながら。この1ページにそんな想いがこめられてます。」

ヴィルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情

2008年に国立西洋美術館で開催された「ヴィルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情」の公式カタログ。
溝口「自分がこういう時代にいたら、どういうものをつくるのかな。そういうのは思ったりしますよね。基本的に、エプロンは煩わしかったけれど、神保町の岩波ホールで見た昔のフランスを舞台にしているような映画を見てキッチンで働く人たちの衣装や服装を見て、それから好きになりました。」

溝口「こういったエプロンとか、手元にあります。
古着で買うとたっぷりとした形でつくってあって大きすぎるんだけれど、祖母に裾上げをしてもらったり、余った布でちょっと手拭いをつくってもらったりしてます。料理をするとき、茶寮でも身につけてます。」

土偶・コスモス | MIHO MUSEUM

2冊目は国宝3点、重要文化財21点を含む土偶や土器を多数収録し、その迫力と不思議な魅力を紹介する『土偶・コスモス | MIHO MUSEUM』。
溝口「土器が大好きで。土偶というより、土器の質感が好き。
土器は何個も持っていて…そういえば上野の土偶展もいきました。この土いいな、この質感、器になったらすごくいいのにって。結局、質感が気になって…器にしたいんでしょうね。質感からの妄想を愉しめるので、この本を選びました。」

'69 新宿カミナリ族はいま…青春ふたたび帰らず |福田文昭 写真集

1950〜60年代後半にかけて新宿を拠点に単車を乗り回した走り屋たちの昔と今をクリアに描き出す郷愁的な一冊、『'69 新宿カミナリ族はいま…青春ふたたび帰らず |福田文昭 写真集』。

溝口「あと、これ、一押しのカミナリ族。かわいい…感情の発露がみんなで共感できるのがいいなと。こうやって記録に残してくれてありがとうって。近くで群がって走られてたら、怖くてたまったもんじゃないけどね。」

甘辛画譜

最後には、溝口さんがこれは、と言って買って帰られた『甘辛画譜』。
昭和31年に発行された、食いしん坊画家・山内金三郎がユーモラスかつ辛口批評した全国各地のお菓子批評本です。

いまでも手にとって食べられる銘菓の他、固くなった饅頭は焼いて食べるか、湯を回しかけて塩をふれば風情ある湯饅頭に、など小さな食いしん坊ならではのヒントも。文章から食べることが好きなことがひしひしと伝わってくる一冊。

菓子屋ここのつセレクト

糧菓をつくる際に参考にしているのは、映画や映像などからインスピレーションが多く、その中でも「中島みゆき」の詩の本を繰り返し読んでいる、というのをチラリと聞いて、溝口さんにノストスの本を選んでもらったら、何が起きるのだろう…と興味を持ったのが始まりでした。

茶と糧菓』の巻頭で、「作る事は生きる事」と言い切っていた溝口さんの潔さ。本のセレクトもはっきりとすごいスピードで選び取られていくのが印象的でした。
紹介しきれなかった、溝口さんが選んだ本はこちらです。

日本の伝統パッケージ/岡秀行
Alberto Giacometti: Traces of a Friendship 喰譜/緒方慎一郎
Terri Weifenbach: Des Oiseaux
現代イギリス陶芸家 ルゥーシー・リィー
ルーシー・リー展 静寂の美へ | 西マーヤ、三浦弘子 他
ルーシー・リー | トニー・バークス
ことばの食卓 | 武田百合子、野中ユリ
Sidewalk Salon: 1001 Street Chairs of Cairo | Manar Moursi、David Puig
Saul Leiter | Francois Halard
超発明 創造力への挑戦 | 真鍋博
指輪 古代エジプトから20世紀まで | 東京都庭園美術館


糧菓を作られる溝口さんの思考回路のふちを覗き見できるかもしれません。


茶と糧菓と共に、ぜひお楽しみ下さい。

茶と糧菓

著者
安藤雅信、溝口実穂
出版社
小学館
和、洋、アジアの垣根なくジャンルを超えて、茶、糧菓、室礼が出逢い、芸術のごとき時間の流れを生み出すこれからの茶会の指南書。茶と糧菓が目の前に供される瞬間の息をのむような感動を写真に閉じ込め、安らぎと発見のある茶の楽しみ方を届ける。東京・浅草鳥越で予約のとれないほど人気を誇る茶寮「菓子屋 ここのつ」を主宰する溝口実穂と、茶道や中国茶文化に造詣の深い陶作家で「ギャルリ百草」(岐阜・多治見)を営む安藤雅信が紙面上で魅せる。
【茶と糧菓 刊行記念展】

陶作家・安藤雅信さん、茶寮「菓子屋ここのつ」溝口実穂さんの共著『茶と糧菓』の刊行記念展を開催いたします。安藤さんによる茶器・器の販売、古書店ならではの選書もあわせてお楽しみいただけます。
2020.10.17 土 -11.1 日
OPEN 土日祝のみ 13:00-18:00

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好きなものには一直線。作り手の思いや物語がこもっているものに惹かれます。喫茶店と古道具とおいしいごはん。撮影・企画のあたりをうろうろしています。