作り手インタビュー:REEL 宗片晴果(1)
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作り手インタビュー:REEL 宗片晴果(1)

東京・初台にアトリエ兼店舗を構えるREELの宗片さん。分業が多い革仕事の世界で、素材選び、裁断、縫製、仕上げといった工程を、すべて一人で行っています。 革で表現できることに対して常に柔軟に、そして真摯に向き合う宗片さんに、ブランドの成り立ちや制作のお話などをうかがいます。


人、モノ、時間を巻き取りながら。「REEL」の由来

ーまずはREELという名前の由来から教えて下さい。

レザーのブランドをやるにあたってREELという名前をつけたのは、革製品は「強くて丈夫で長く使える」というのが大前提にあります。REELは釣りの糸に使われていて強いっていうのがひとつ。またフィルムの映写機はREELという名前でもあります。

また、ヴィンテージのものも新しいものも好き。そして周りの友人に物を作っている人が多いので、様々な人と関わってものづくりをしていきけたらと思っていて。

そういうものを全部中和させてものを作り、いろいろ巻き取っていけたら...というので、REEL(=巻き取る)というブランド名にしてます。なにより、響きが好きなのもあります。

ーお店兼アトリエのこの場所に何度かお邪魔してお話を伺ううちに、空間でも、作品でも、だれかと作りあげるための余白を作っているのかなという印象を受けました。

それ感じ取ってもらうの新鮮です。わけへだてなく、誰とでもフラットに付き合いたいですし、やっぱり出会いを大切にしていきたい。そしてこの場所に来てくれた人たちとのつながりを大切にしたいと思ってます。

場所があることでいろんな広がりや発展があると思っているので、それが伝わってるのが嬉しいです。

ー革のお仕事を初めてから、「場所を作りたい」っていうイメージが最初からあったんですか?

12年前に入った会社が、何店舗かは工房が後ろにあって、もう半分にはお店があるという形でやっているところで。自分が1人でブランドをやるって考えたときも、そのスタイルは1番やりたいなと思ってました。ちょうど3年半前に独立しました。

もとは祐天寺の〈feet〉というお店の裏でやっていたんですけど、洋服屋さんの後ろにカバンのアトリエがあるっていう見たことないスタイルでした。最初はメンズ店にいたんですけど、移転するタイミングで「レディース店で工房を持ってみるか」ということになり、〈steef〉の一角で制作してお店で販売をして...という形です。

やっぱり作り手が生産している場所で(商品を)買えたら、買う人も嬉しいと思う。自分がお客さんだったら嬉しい。見たいですしね、作ってるの。なので一体型が一番しっくりきますね。

展示会ごとに変化するプロダクトと空間

ー展示会ごとに、全体の色の展開を変えられていますよね。

半年に一回の展示会で新作を出しながら、定番の色をリニューアルしたりしてます。

最初は無題でやってたんです。空間を見てもらうっていうのを目的にやっていたんですけれど、せっかくやるならここに来てくれた方が、癒されたり、刺激になったり、不安定な世の中で何かのきっかけになるような空間にしたいなというのを考えていました。

ー展示のテーマのつけ方が面白いなと思っていました。前回のテーマ「いと間」などはどこからきているのですか?

「いと間」は造語じゃないですけれど、勝手に作ったような言葉。

「いと間」の展示会では、初日にお茶をたてていただきました。 「一服しにいらしてくだい」というのをタイトルにしたいと思っていたので、誰でもリラックスしに来てくださいという感じでつけてます。

最初は「一服」にしようと思ったんですけれどそれは直結しすぎてるよな…と思って。

「一服」って"時間をもてあそぶ"じゃないですけど、タバコを吸うとか、休むとか、暇とか、漢字を集めてた時に「暇」の漢字もいいなって思ったんです。

「暇」の古語で「いとま」とあって。あ、「いと間」だと。あと、ものとものの間とかはざまとか、いろいろな意味をこめて。「休憩しにいらしてください」っていう展示会ですね。

ーなるほど。お茶や仕覆など、お話を伺うと和に関わるものが多いですよね。畳の什器も増えたんですね。

掛け軸とか和のものを作っているなかで小上がりのようなスペースをまず作ろうと思っていたんですけど、什器の方が動かしたりできるのでこういう形で作ってみました。最近あまり目にしなくなったりしてきてるのもあって。

誰かの発想と交わることで広がるものづくり

2年前に和のものを革で作るようになりました。お茶をたてている友人には、「革で垂撥(すいはつ)を作ったらいいよ」って言われて。

もともとの垂撥は竹でてきていて、2m位の大きさのものもあるような、茶室で書だったりお花だったりを装飾できるものとして作られているものです。こういう日本のものを革で作ることによってそこまで和ものに寄りすぎず、インテリアとして使えるかなと思って作っています。

革が表紙の和綴じノート。蝋引きのグレーと、蝋引きのベージュ。
ー2年前にその和のものを作るきっかけはなんだったんですか?

作りたいものは常にいろいろあって…で、掛け軸を作りたくて。その展示会は和にぐっと寄せて、掛け軸と垂撥、あと茶さじとか、如意(にょい)とかを作りました。

ー作ってみたいものに掛け軸、おもしろいですね。そして、「にょい」ってなんですか…!

お坊さんがお経を唱える時に持っている道具のひとつで「意の如し(ごとし)」とかいて、如意。「願いを叶える」という意味もあります。お茶の竹山と一緒に「如意、レザーでできたらかっこいいよ」という話になって作ったんです。

ーそういう会話から生まれていますよね、美容師さんのシザーケースのオーダーメイドとか…柔軟にとりいれられている印象です。

友人、知人が「作れる?」っていうものから。作ったことないものを作るのは楽しいです。あとバランスとかを考えることも。

たとえば掛け軸ひとつとっても決まりがいっぱいあって、ひとつひとつに名前がついてます。それに合わせて作るのか、合わせないで作るのか絶妙なバランスでセンスだと思うんですけれど、それを考えているときがとても楽しくて。なにより「楽しい」、「作るのが好き」でやってます。

あの石も革を削って作ってます。

ブランドを始めたばかりの時に絵を書いている友人と2人展をはじめたんですけど、絵を描く時に手が紙にあたる部分が黒ずんでしまうので、そに紙を重ねて台にして書いているって言っていて。それを革でできないかなって話して作ったんです。

大きいのを作って展示会に出したら、「小さいのを作ったら石みたいだよね」って別の友人に言われて、「あぁ、そうだね!」となって。革の廃材を集めて、次の展示会で沢山作ったんです。

ー革をつかって地層のような作品を作られていたこともありましたよね。

これですね。絵を描いている森みなこさんの展示会で立体のものを作りたいって言ってくださって、私がレザーで加わる形で作りました。

グラフィックデザインもやっているもりみさんが、google earthで地形を上から俯瞰した地形図を作ったもので。その解釈がデザインの人で、かっこいいですよね。この流れが私にはないんですよね。

そうなると私もやっぱりできるだけ形にしたい。革がやわらかいから、レザーで直角を出すのが難しいんです。すごく繊細で、ここの幅が3mmで5mmで...という指示をいただきました。言われないと分からないんですけど。

誰かと一緒に何かを作るっているのは、やっぱり自分だけの発想ではなく、こうしたほうがいいという話ができるのでおもしろいです。
自分だけだと完結してしまいますけど、広がりますね、アイディアが。
次回は「作り手インタビュー:REEL 宗片 晴果(2)」に続きます。

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好きなものには一直線。作り手の思いや物語がこもっているものに惹かれます。喫茶店と古道具とおいしいごはん。撮影・企画のあたりをうろうろしています。