作り手インタビュー:木工作家・辻有希(3)
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作り手インタビュー:木工作家・辻有希(3)

北海道で木工作家として活動する辻有希さん。前回のインタビューでは、実験を重ね、遊びにも似た感覚で制作を行っていくことが、一番魅力的になると語られていました。

現在制作中の「石器」という作品も、そうした実験の延長線上にあったそう。


石器とインスピレーション

「石器」に関してはこういうふうにしてやろうという自分の意図がちょっとでもあると、魅力的な形になれないと感じています。隣に石器の写真をおいて真似してつくるというよりかは、頭に(石器のイメージを)インスピレーションして、あとは手が勝手につくってくれという感じで。

石器って石を打ち割って形つくられたものだけど、木はそういうことができるわけじゃないから、(木で)ぶつかりあった細部をどうにか表したいと思っていて。

それはゆっくり静かにつくるというものでは表せないので、勢いと潔さをもって、なるべくはやくつくることを意識してつくっています。

ー作品をつくる時にインスピレーションを受けているものがあったら教えてください。

木の素材や、森に行ったりすることはインスピレーションのひとつにはなっているんですけど、本とか展示を観に行ったりするのは、建築とかグラフィックとか、異分野のものから影響を受けることの方が多い気がします。

沖潤子さんの展示も印象的で、作品がもつエネルギーと、展示の仕方もとても勉強になりました。
あとは民族的なものとか。『サハリン住民の精神世界』の図録は、北方民族系の道具とか民具とかも載っていて、本当にかっこよかった。

ーそういった、「古来のもの」に惹かれることが多いですか。

それはあるかもしれないです。エネルギーはもちろん、昔の人はそれを日常の道具として、必要だと思うものをつくっていただけなのに、こんなに美しいっていうのが魅力的ですよね。

昔はグラフィックデザインとか抽象絵画とかを見てたんですけど、最近は素材とか昔の道具とかを見る方が多いかもしれないです。

あとは全然違うんですけど、モビールみたいに仕組みとか展開図みたいなものも好きです。
『SUPER SURFACES』は大学のときに本屋で見つけたんですけど、梱包材をいろんな切り方をして、帽子にしたり羽織ってみたり、同じ素材なんだけど視点を変えるだけで色んなものになる。
ほかにも、友人に借りた『FRUITE BOWL/DDAA LAB』は、布を紐で縛るだけでいろんなパターンのフルーツボールをつくってる。道具は限られてるけど機転次第で100パターンあるよ、みたいな。自分でもいろんなもので考えてみたり試してみるのがすごい好きですね。

難しいかもしれないけど、木も彫るだけじゃなくて、違うところに切り込みをいれたらもっと壮大になるんじゃないかとか。ありえないかもしれないけど、思考をいろいろ巡らしたりしますね。

無作為的に現れるものも、構築していくのも好き。どっちかに絞ったほうがいいんじゃないかなって思った時もありましたけど、どっちも等しく好きなのが自分だから、どちらもやめずにやっていきたいなと、今は思っています。
こちらの作品も今回の展示に並ぶ「石器」シリーズ
編集後記
辻さんの言葉には、つくることが好きな気持ちと、木に対する尊敬の思いが溢れていました。だからこそ、木の材をいかしながらも、辻さんならではの自由な発想でのびのびとした作品が生み出されるのだと感じました。
作為と無作為の間で生まれるモビールは、どんどんと進化を遂げています。11月21日(土)から始まる展示では、辻さんの新しい挑戦と実験の先で生まれた作品がずらりと並びます。どうぞお楽しみに。

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故郷・広島県で雑貨のお店をしていた影響で、器に目がない。盛り付ける料理は修行中。ノストスブックスの雑貨担当として奮闘します。暮らしにまつわる本、民藝本、画集が好きです。