花と暮らす、植物と暮らす。フラワースタイリスト「ふたつの月」の季節を感じる日々
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花と暮らす、植物と暮らす。フラワースタイリスト「ふたつの月」の季節を感じる日々

ノストスブックスの店頭装花や、スワッグの展示販売でもお世話になっているフラワースタイリスト「ふたつの月」の平松朋子さん。ともに生活を豊かにしてくれる「本」と「植物」。そんなつながりから、今回ノストスブックスのオンラインストアでスワッグを取り扱うことになりました。

松陰神社前と故郷・京都に拠点を置きながら、植物のある暮らし方を提案する平松さんの、植物と生活に対する想いを伺いました。


花の仕事ばかり。でもこれが好きなんです。

スワッグと暮らす、季節と暮らす。植物のある暮らしを提案するフラワースタイリスト「ふたつの月」 --ご出身は京都なんですよね。
はい。京都の中心から電車で30〜40分はかかる落ち着いた場所で、のどかでゆったりしたところなんです。

--じゃあ、いわゆる京都の都(みやこ)感というよりは、田園風景というか……(笑)。
はい、もともとお茶の産地として有名な場所なんですが、今は両親も定年退職して、自分たちの食べる野菜とお米、そして最近はレモンを育てています。

--私が大好きなSTUDYのレモネードも、一時期だけ平松さん家のレモンになるから、それがいっそう楽しみなんです。広島や愛媛のレモンは見たことがありますけど、京都は珍しいですよね。
そうなんです、レモンがその地域の特産になればいいなという気持ちで頑張ってるみたいです。大事に育てたお米もやっぱり美味しいです。たまに切らしてスーパーで買うこともあるんですけど、いつも違うなとすぐ感じてしまいます(笑)。本当に食べることは大切。身体は食べ物からできていますからね。

--お花に関わる仕事をすることになった原体験も、こういった植物が身近な環境にあるんでしょうか。
そうですね。いつも自然を見ていたから、自然をそのまま取り入れることが好きのかな。それと、高校時代に地元で通っていたフラワーアレンジメント教室の影響が大きいと思います。別に植物について学んでいたわけではなかったんですけど、そこで花に触れることの楽しさを知って、花屋に就職しました。東京で転職しても、また花屋になりました。だから、花の仕事しかしてないんです。

--な、なんと純粋な……(笑)。
本当ですね。理想と違ってすごく体力が必要だし、地道な作業も多いけど、花と触れていると元気がもらえるんですよ。京都から東京に出る前も、別の仕事も考えてみたんですけど、やっぱり無理で。もう、これはちょっとした中毒みたいなものです(笑)。

スワッグと暮らす、季節と暮らす。植物のある暮らしを提案するフラワースタイリスト「ふたつの月」

植物と結びついた暮らし方を広めたい。

--上京してどれくらいになりますか?
転職のために2007年に上京して、今年で10年目になります。

--そこはどんな花屋だったんですか?
フランス人デザイナーの、クリスチャン・トルチュ氏がディレクションをしている花屋だったんです。そこはパリらしく、植物を自然に取り入れながら、都会的な雰囲気を作り出すようなテイストで。オリジナルで、花器やキャンドル、ルームスプレー、お香などのプロダクトも展開していました。

--花を「華やかさ」として取り入れるというよりも、生活に馴染むような取り入れ方を提案していたんですね。
そうそう。美しいものに触れる生活を提案していくようなお店でしたね。

スワッグと暮らす、季節と暮らす。植物のある暮らしを提案するフラワースタイリスト「ふたつの月」 --そして、「ふたつの月」になるんですね。独立のきっかけは何だったんでしょうか?
そのお店が一旦閉まることになったんですよ。それをきっかけに、別の花屋に勤めるか、1人でやるかを考えたとき、せっかくだから自分でやってみたいなと。やっぱり、自分がいいと思うお花を提案して、それをいいと思ってくれる人に届けたくて。

--一人でやるにしても、場所を持つ「花屋」ではなく、「フラワースタイリスト」を選んだ理由は何だったんですか?
もちろん将来的にはお店を持ちたいんですが、まずは自分のできる範囲から始めようと思って。ゆとりがなくなると、自分が家に花を飾らなくなるし、季節を見なくなっちゃったことがあって。それでもう一度、自分の時間も大切にしたいと思ったから、スタイリストを選びました。

--今は、ディスプレイや装飾などのお仕事の他に、一般の方向けでレッスンもされているんですね。
はい、自宅をアトリエにして。そうすることで、生活に植物を取り入れる方法を提案しやすくなるんです。季節ごとにベストな植物の飾り方もあるんですよ。クリスマスとか、お正月とか、植物は人の暮らしのサイクルにも結びついていますし。

--なるほど、「季節が巡る」イコール「植物が巡る」。
そうそう。京都の実家では、農家の祖父母と一緒に住んでいて、季節の植物と親しむ機会が多かったんです。春にはよもぎを摘んで食べたり、節分には柊を飾って魔除けにしたり。だから私は、東京でも植物と自分の生活が結びついている暮らし方を提案したい と思っていて。さすがに野放しの自然は近くにないから、たまにはスーパーで買うこともあるんですけど、そうやってどんどん植物を取り入れた生活を広めていきたいですね。

スワッグと暮らす、季節と暮らす。植物のある暮らしを提案するフラワースタイリスト「ふたつの月」

変わるものと、変わらないものを花で表現する。

--屋号「ふたつの月」にどんな意味が込められているのか、とても気になっていたんです。
改めていうと恥ずかしいんですけど、「ふたつの月」は、私の名前から取っています。「朋子」の「朋」が月が2つだからっていう(笑)。

--本当だ!今まで気付きませんでした!
あはは(笑)。やっぱり自分に関係のあるものにしたいですからね。月は暦の上で形が変化するけれど、長い目で見たらずっと変わらずそこにある 。変わるものだし、変わらないものでもある。それだけじゃなく、人によって捉え方が変わるじゃないですか。ある人にはうさぎに見えたり、ある人には座って本を読む女性に見えたり、なんてね。だから月ってすごくミステリアス。

--確かに。
そういうものを花で表現したいなって。花の魅力も普遍的なのに、飾る空間や人の感情によって変化するでしょう?それと、「ふたつの月」と聞いたときに「これってどういう意味だろう?」って思ってもらえるのもいいなと思って。

スワッグと暮らす、季節と暮らす。植物のある暮らしを提案するフラワースタイリスト「ふたつの月」 --なるほど。
月の満ち欠けとともにある暮らしっていうのもいいなって思っていて。今日は新月だから頑張りすぎなくていいとか、今日は満月だから元気だ、とかね。

--個人的な話ですが、今年初めて月相カレンダーを買ったんです。今まで、夜に空や月なんて見ないで、すぐ家に帰って寝ることがほとんどだったけど、月のことを考える時間が増えたんですよね。
素敵ですね。そうやって月のサイクルを見ていると、体調を崩しやすい時期もわかりますよね。夏から秋とか、冬から春とか、暦が変わる時期。でも、そういう時期には昔から精力が付く旬のものが食べられているから、現代の私たちもそれを取り入れることで元気に暮らすことができる。本当に月や植物は私たちの生活に欠かせないと思います

スワッグと暮らす、季節と暮らす。植物のある暮らしを提案するフラワースタイリスト「ふたつの月」

グリーンはすべてのはじまりの色。

--「ふたつの月」のフラワーアレンジメントって、グリーンをベースにした落ち着きのある色味が多いですよね。それに、他ではあまり見かけない植物が入っていることもある。選び方にどんなこだわりがあるんですか?
単純に、私が好きだと思ったものを仕入れています。変わった形や色、香りに惹かれることもが多いですし、華々しいものより、どちらかというとサブ的なグリーンとか、野草っぽいものとか、普段はちょっと控えめな存在のものに目が留まることが多いですね。それに、グリーンが好きなのは、すべての植物の始まりの色だから 。ほら、蕾はたいていグリーンじゃないですか。

スワッグと暮らす、季節と暮らす。植物のある暮らしを提案するフラワースタイリスト「ふたつの月」 --確かに、言われてみれば。
だから、どんな色も合うし、馴染むんです。それに、グリーンの中にも、シルバーがかってたりとか、濃かったり、薄かったり、艶があったり、マットだったり。その質感のグラデーションもグリーンは美しいから、好んで選んでいますね。

--よく駅の近くにあるチェーン店の花屋さんの花って、華やかではあるんだけど、お祝い用だなって思います。生活の中に入れるには、ちょっと浮いちゃう。でも、平松さんが提案するお花は寄り添うように生活に馴染んで行く 感じ。陳腐な言葉ですけど、優しくて好きです。
ドキッ(笑)。

スワッグと暮らす、季節と暮らす。植物のある暮らしを提案するフラワースタイリスト「ふたつの月」 --あはは(笑)。でも、素朴な花こそ、すごく変化を楽しみたくなりますよね。華やかな花は、ちょっとでも枯れると愛想が尽きちゃうというか。「そろそろ捨てようかな……」って思い始めてしまうんですけど、平松さんの作ったスワッグは「もうちょっと飾っていたい」「ここからどう変化するんだろう」って思って、ずっと置いておきたくなるんです。
色褪せていく変化も楽しめますよね。このあいだポップアップショップをしたんですけど、自分の好きな花ばかり仕入れてみたら、全然華がない植物が多くなっちゃって、地味だな〜って(笑)。でも、組み合わせてみると意外と華やかになるから、不思議ですよね。

生活動線に花を飾って、息抜きを。

--素朴な質問なんですが、植物を生活に取り入れることの良さってなんなんでしょう?
う〜ん、それは……植物が生き物だからじゃないでしょうか。気配を感じたり、手間をかけると応えてくれるし、観葉植物なんかはかけすぎると弱っちゃう(笑)。一筋縄ではいかない子育てを、楽しく思うのと同じというか。人は何十年と生きるけど、木々は春に新芽が出て、夏に緑が茂って、花が咲いて、秋に種になって、冬には落葉する。その1年に凝縮されているほんのわずかな花の命を見守るのが楽しいんじゃないかな。

--なるほど……。なんだか、腑に落ちた気がします。
咲いているときだけが綺麗じゃなくて、芽を出して、葉が生えて、蕾が育つ……っていう過程も可愛いし、朽ちていく姿も美しいと思えますよね。きっと、そういうことなんだと思います。

スワッグと暮らす、季節と暮らす。植物のある暮らしを提案するフラワースタイリスト「ふたつの月」 --最後に、スワッグなどで植物を生活に取り入れようかなと思っている方に、一言お願いできますか。
季節の植物を、気軽に気軽に部屋に飾ってほしいと思います。まずはよく目に入るところがいいかもしれません。ふとしたところにお花があると、すごくホッとするので。リビングやキッチン、トイレ、洗面所、玄関とか。

--生活動線に。
そうそう。自分の生活の動きの中に、ふっと心を緩められる場所があると潤う ので。一輪のお花でも、グリーンでもいいですし。小瓶に差すだけでも。あとは、自然な香りも楽しんでいただけたら。「香る」よりも優しく「漂う」感じ。気になりすぎなくて、ふとしたときに香りに気づくくらいが、ちょうどいいと思いますよ。
ふたつの月 クリスマスリース展


COMMENT:
グリーンやシルバー色の葉や緑から少しずつ色づいた実でつくるリースは
部屋に植物を飾る楽しみと、木々のやわらかい香りに癒されます。
フレッシュな素材は時が経つにつれて乾燥し、葉はシルバー色、実は茶褐色になっていきます。
その変わっていく姿は、過ぎゆく時間とともに楽しんでいただけます。
日々の暮らしの中に花や植物を飾るきっかけとなりますように。
一点一点、少しずつ表情が違います。
お気に入りをみつけてください。


DATE:
2016年11月20日(日)ー 11月27日(日)


PROFILE:

ふたつの月 フラワースタイリスト/平松 朋子
京都の自然あふれる田園に育ち
幼い頃から日々の暮らしの中に植物があふれていた。
上京後、東京のローカルな雰囲気ただよう
世田谷、松陰神社前を拠点に
暮らしに寄り添う花を提案。
定期的にゆかりのある京都にて花の活動をおこなう。
futatsunotsuki-hana.com


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