活版印刷が生み出す味わい。文字を挟むメッセージカード「Words Sandwich」
書いた人

活版印刷が生み出す味わい。文字を挟むメッセージカード「Words Sandwich」

新商品を入荷しました。
Words Sandwich(ワーズ・サンドイッチ)」は、食材の名前が書かれたアルファベットカードをパン型のカードに挟んで気持ちを伝える、新しいメッセージカードです。

sand01-2 どんな想いでこのプロダクトのデザインが生まれて、どんな方法で作られたのか。そんなものづくりの裏側にあるストーリーも一緒に味わっていただけたらと思い、生みの親であるNecktie Design Office 代表の千星さんにお話を伺いました。



誰かのためにサンドイッチを作るときの「ウキウキ」を届けられたら

――まず気になるのがサンドイッチという形状。「パン」と「メッセージ」のあいだには、どんな関係があるのでしょうか。
「サンドイッチの食材を選んではさむ行為って、なんか素敵だな」とぼんやり感じたことがあって。特に人のためにサンドイッチを作るときって、なんだかウキウキしませんか?「この食材の組み合わせにしたら、どんな味になるだろう」とか「この食材は好きじゃないっけ?」とか、相手のことをいろいろ想像している時間そのものが楽しい。そんなウキウキをカードにしてプレゼントすることができたら素敵だな、と思って。

sand16

紙であっても、おいしいパンであることにこだわる

――パン型のカードを手に取ってみて、驚いたのはその質感です。単純にパンの形状をしているだけでなく、今まで触ったことのないようなふわふわの紙は、まるで本当にパンを触っているようでした。
グラフィックデザイナーが作る紙ものなので、どうしても細部まで気になってしまうんです。厚紙はありきたりだし、サンドイッチにするなら固いパンは美味しくなさそう……。でも、ふかふかした紙なんてなかなか見つからない。やっと見つけても、やたらコストが高かったり、生産中止になっていたり。

ようやく基盤などのクッション紙を作っている製紙メーカーさんから、おそらく日本で最低密度の紙 を比較的小ロットで出していただけることになり、このふわふわの質感が実現しました。

WORDS SANDWICH パンらしい厚みを出すために1mmの紙を2枚合わせているんですが、その厚みがかえってエッジの白さを目立たせてもしまうんです。そこで、レーザーカッターを低速で回して、まるでパンを焼くようにわざと焦げ目をつけながらカット しています。かなりパンっぽさが表現できているんじゃないかな。

WORDS SANDWICH ――プリントされたパンの写真以上に、触り心地がパンに近い紙……。正直、今の時代にここまでのこだわりを落とし込んだプロダクトに出会えるとは思ってもみませんでした。どんなことを意識して、ものづくりをしていらっしゃるんですか?
ものづくりの現場では、コストや効率の知識がありすぎるとついつい経済効率を優先しがちになって、結果今までの延長線上のデザインしか出てこないことってよくあると思うんです。あるいはWebの世界でありがちかもしれませんが、技術の知識がありすぎて、技術ばかりが先行して、本来の伝えたい意図や想いが伝わらないものができあがってしまうこともしばしば。かと言って、まったくの素人で知識や技術がなさすぎては、現実にものはできあがらない。

でも、「下手でも熱量があるもの」 はとても好きだったりします。 だから、「素人(シロうと)」と「玄人(クロうと)」のあいだのシロからクロの無限のグラデーションを往復できる「グレー人(グレーと、great)」でいることを意識 していますね。

活版印刷にしか出せない風合いを

――活版印刷の風合いがいいなあって前から思っていたんですけど、実はお恥ずかしいことに、どうやって作られているのか全然知らなくて。
活版印刷 は、活字を組み合わせてつくった版にインキを付け、圧力をかけて印刷する印刷方式です。近年よく見かけるヘコミがあるような活版印刷は、樹脂や金属凸版を使って活版印刷機で印刷しているものがほとんどですね。従来の金属活字でヘコミができるくらいの印圧で印刷すると、すぐに活字が傷んでしまいますから。

WORDS SANDWICH 本来は、活版印刷でもカスレやヘコミは粗悪な印刷物とされていたんですよ。ただ、今の主流である忠実にデータを出力するオフセット印刷 に慣れた人の目には、オフセットの印刷では決して出せないそのカスレやヘコミの陰影、ムラといったアナログな風合いが、ものとしての魅力をより引き出してくれるのではないでしょうか。

Words Sandwichでは、表面には金属凸版を使って印圧を強くヘコミがでるように印刷し、裏面には金属活字を使って、適切な印圧でそれぞれ印刷しています。一枚一枚ハンドプリントで印刷しているので、ムラやカスレといった1枚ごとの風合いはかなり大きいと思います。

WORDS SANDWICH ――手で一枚一枚、ですか。
はい、しかも、表面2回・裏面1回と、1枚のカードに対して3回すべてハンドプリントで印刷機を通して制作 しています。アルファベットカードは単色なので、はじめ表面は1回通しにするつもりだったんですが、実際に印刷してみると、大きいアルファベットと下のテキスト部分でインキ量がかなり違うので、試行錯誤してもなかなか思うような仕上がりにならなくて。

時間は2倍になりますが、上下を分版して別々に印刷にすることでなんとか世に出せるクオリティに仕上がりました。それが26種類なので、製作期間中はずっとアトリエにこもりっきりでしたね(笑)。ちなみに、紙には、ステーショナリーでも有名なアメリカ・クレイン社のコットン100%紙を使用しています。

sand43 ――真面目な性格だからこそ成せる業とも言えますが、そこまでのめり込める活版印刷や紙の魅力はどこにあるんでしょうか?
何なんでしょう。昔の印刷物が好きで、どうやったらこんな立体感や奥行き が生まれるんだろうって思っていました。それに比べると、自分がデザインしたものはとても薄っぺらく感じることが多くて、いつもがっくりしていました。単純にデザイン力の差だろうとツッコミを受けそうですが(笑)。

それに、タイポグラフィを突き詰めていくと活版印刷は絶対に避けて通れないので、「これはちゃんと自分でやってみないとどうしようもないな」と思って、活版印刷にトライしています。ただ、活版印刷は600年の歴史の上に成り立っているので、そんなに単純にはいきません。だから今も印刷や紙の魅力を探す旅を続けている途中です。あ、なんかかっこよく言いすぎですね。

sand44 余談ですが、スパイク・ジョーンズの映画で、「her」という主人公が人工知能と恋に落ちる話があって。映画で描かれている近未来では完全に社会がデジタル化されていて、テキストの入力やパソコンの操作もすべて音声認識なんです。そのなかで主人公の書いた手紙が紙の本として出版されることになって、『だって、紙の本だよ!』と歓喜するシーンが、妙にリアルに迫ってくるんですよね 。近い将来、こんな風に紙の印刷物に対する考え方も大きく変わるんじゃないでしょうか。

サンドイッチを作るように、相手に渡したい言葉を選ぶ

――アルファベットカードに書いてあるのはテキストだけですが、トマトやレタス、ベーコン、マスタードとか、食材の名前を頭文字にしているから、組み合わせたときの味を想像しながら選ぶのも楽しそうですね。

WORDS SANDWICH まずは、メッセージを作る方に言葉のサンドイッチを作る行為そのものを楽しんでいただけたら いいなと思っています。当初は、「LOVE」や「THANKS」といった定番の言葉や、お子さんが産まれた方へ子どもの名前を作ってプレゼントすることを想定していましたが、実際にはかなりいろんな用途で購入していただいているようで。
結婚式で使いたいと「WELCOME」を作ってくださったり、お知り合いのお店の周年にお店の名前を作ってプレゼントされたり、家族3人のイニシャルを選ばれる方もいらっしゃって、購入される方々のほうがもっとクリエイティブで素敵だなぁと、とても感銘を受けました。いろんなシーンで使っていただけたら嬉しいです。

WORDS SANDWICH WORDS SANDWICH WORDS SANDWICH WORDS SANDWICH WORDS SANDWICH WORDS SANDWICH
メッセージとしてはもちろん、ディスプレイとしても。気分にあわせてメッセージを入れ替えたり、インテリアとしても楽しむことができるカードは、ノストスブックスの店頭のみで販売中です。お取り置きや在庫については、こちらからお気軽にお問い合わせください。

この記事をシェアする