「Words Sandwich(ワーズ・サンドイッチ)」は、食材の名前が書かれたアルファベットカードをパン型のカードに挟んで気持ちを伝える、新しいメッセージカードです。

誰かのためにサンドイッチを作るときの「ウキウキ」を届けられたら
――まず気になるのがサンドイッチという形状。「パン」と「メッセージ」のあいだには、どんな関係があるのでしょうか。「サンドイッチの食材を選んではさむ行為って、なんか素敵だな」とぼんやり感じたことがあって。特に人のためにサンドイッチを作るときって、なんだかウキウキしませんか?「この食材の組み合わせにしたら、どんな味になるだろう」とか「この食材は好きじゃないっけ?」とか、相手のことをいろいろ想像している時間そのものが楽しい。そんなウキウキをカードにしてプレゼントすることができたら素敵だな、と思って。

紙であっても、おいしいパンであることにこだわる
――パン型のカードを手に取ってみて、驚いたのはその質感です。単純にパンの形状をしているだけでなく、今まで触ったことのないようなふわふわの紙は、まるで本当にパンを触っているようでした。グラフィックデザイナーが作る紙ものなので、どうしても細部まで気になってしまうんです。厚紙はありきたりだし、サンドイッチにするなら固いパンは美味しくなさそう……。でも、ふかふかした紙なんてなかなか見つからない。やっと見つけても、やたらコストが高かったり、生産中止になっていたり。
ようやく基盤などのクッション紙を作っている製紙メーカーさんから、おそらく日本で最低密度の紙 を比較的小ロットで出していただけることになり、このふわふわの質感が実現しました。


ものづくりの現場では、コストや効率の知識がありすぎるとついつい経済効率を優先しがちになって、結果今までの延長線上のデザインしか出てこないことってよくあると思うんです。あるいはWebの世界でありがちかもしれませんが、技術の知識がありすぎて、技術ばかりが先行して、本来の伝えたい意図や想いが伝わらないものができあがってしまうこともしばしば。かと言って、まったくの素人で知識や技術がなさすぎては、現実にものはできあがらない。
でも、「下手でも熱量があるもの」 はとても好きだったりします。 だから、「素人(シロうと)」と「玄人(クロうと)」のあいだのシロからクロの無限のグラデーションを往復できる「グレー人(グレーと、great)」でいることを意識 していますね。
活版印刷にしか出せない風合いを
――活版印刷の風合いがいいなあって前から思っていたんですけど、実はお恥ずかしいことに、どうやって作られているのか全然知らなくて。活版印刷 は、活字を組み合わせてつくった版にインキを付け、圧力をかけて印刷する印刷方式です。近年よく見かけるヘコミがあるような活版印刷は、樹脂や金属凸版を使って活版印刷機で印刷しているものがほとんどですね。従来の金属活字でヘコミができるくらいの印圧で印刷すると、すぐに活字が傷んでしまいますから。

Words Sandwichでは、表面には金属凸版を使って印圧を強くヘコミがでるように印刷し、裏面には金属活字を使って、適切な印圧でそれぞれ印刷しています。一枚一枚ハンドプリントで印刷しているので、ムラやカスレといった1枚ごとの風合いはかなり大きいと思います。

はい、しかも、表面2回・裏面1回と、1枚のカードに対して3回すべてハンドプリントで印刷機を通して制作 しています。アルファベットカードは単色なので、はじめ表面は1回通しにするつもりだったんですが、実際に印刷してみると、大きいアルファベットと下のテキスト部分でインキ量がかなり違うので、試行錯誤してもなかなか思うような仕上がりにならなくて。
時間は2倍になりますが、上下を分版して別々に印刷にすることでなんとか世に出せるクオリティに仕上がりました。それが26種類なので、製作期間中はずっとアトリエにこもりっきりでしたね(笑)。ちなみに、紙には、ステーショナリーでも有名なアメリカ・クレイン社のコットン100%紙を使用しています。

何なんでしょう。昔の印刷物が好きで、どうやったらこんな立体感や奥行き が生まれるんだろうって思っていました。それに比べると、自分がデザインしたものはとても薄っぺらく感じることが多くて、いつもがっくりしていました。単純にデザイン力の差だろうとツッコミを受けそうですが(笑)。
それに、タイポグラフィを突き詰めていくと活版印刷は絶対に避けて通れないので、「これはちゃんと自分でやってみないとどうしようもないな」と思って、活版印刷にトライしています。ただ、活版印刷は600年の歴史の上に成り立っているので、そんなに単純にはいきません。だから今も印刷や紙の魅力を探す旅を続けている途中です。あ、なんかかっこよく言いすぎですね。

サンドイッチを作るように、相手に渡したい言葉を選ぶ
――アルファベットカードに書いてあるのはテキストだけですが、トマトやレタス、ベーコン、マスタードとか、食材の名前を頭文字にしているから、組み合わせたときの味を想像しながら選ぶのも楽しそうですね。
結婚式で使いたいと「WELCOME」を作ってくださったり、お知り合いのお店の周年にお店の名前を作ってプレゼントされたり、家族3人のイニシャルを選ばれる方もいらっしゃって、購入される方々のほうがもっとクリエイティブで素敵だなぁと、とても感銘を受けました。いろんなシーンで使っていただけたら嬉しいです。





