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Ilustration by Daisuke Hiratsuka

Column_No. 02
WOMEN:女性アーティストの生き様を追う

こんにちは。錦です。前回は「色」を着眼点にしてカラー写真をみてみようと提案させてもらいましたが、それから面白い作品と出会えましたか?

今回は、恐らく写真より遥かにとっかかりにくいだろう「アート」との接点 を見つける試みです。

「アートってなんだか難解な気がして捉えどころがないから縁遠い…」という気持ち、よくわかります。それならば「男性・女性 」という身近な観点から比較してみてるのも一興です。男性アーティストは、強烈な個性のなかに少年のような純粋さを持ち合わせているような一面があります。一方、女性アーティストからは母なる大地のようなダイナミックさや寛容さを感じることが多いです。果敢で精力的な制作活動を通じて生きる道を切り拓いてきた彼女たちには、同じ女性として共感と敬意を覚えます。これから、実際にわたしが刺激を受けた3名のアーティストを取り上げ、三人三様の歩みをみていきます。


ニキ・ド・サンファル:躍動感あふれる自由な女性像をかたどる

以前箱根 彫刻の森美術館では、漆黒の肌にカラフルなドレスを身にまとう豊満な女性を象った彫刻作品と衝撃的な初対面をしました。圧倒的な存在感を放つこの作品がまさに、ニキ・ド・サンファルの代表作「ナナ」でした。

「ナナ」シリーズは、彼女の友人が妊娠した姿から着想を得て制作されました。躍動感にあふれたようすは、女性の解放を希うニキが理想とする自由な女性像を象徴しています。男性優位の社会構造や自身に降りかかった不遇をバネにして制作活動へと打ち込んできたニキの作品から、力強さを感じるのもうなずけますよね。

作品集「Niki De Saint Phalle」では、女性像でありながらパビリオンの機能も兼ねる巨大作品「ホン」をみることができます。

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オノ・ヨーコ:「ジョンの妻」だけではない、アーティストとしての一面

「ジョン・レノンの妻」としてあまりにも有名な彼女ですが、実はパフォーマンス・アートやコンセプチュアル・アートの第一人者として世界的に高い評価を得ています。

1960年代以降に世界各地で行われた「カット・ピース」は、粛々とした空気感のなか、舞台上に座り込むオノが身にまとう洋服を観客が順にハサミで切りとっていくパフォーマンス。これは性差により女性が受ける苦痛を暗示しています。悪しき社会的伝統に一石投じる、勇気に満ちた作品です。



1964年に刊行された詩集「グレープフルーツ」は、彼女の代表作であると同時に、コンセプチュアル・アートにおける金字塔とも言われています。例えば「地球が回る音を聴きなさい」といった禅問答のような極めてシンプルな言葉によって綴られたセンテンスを、読者がめいめい想像力を働かせて受け止めるのです。わずか500部の初版は今や入手困難ですが、その代わり「グレープフルーツ・ジュース」ではこの作品のエッセンスに触れることができます。

pov_02 オノは80歳を超えた今でも、SNSを通じて積極的にファンとのコミュニケーションを図っています。とかく奇抜な女性像を語られがちですが、彼女の行動を見ればとても強く、温かいひとだということが伝わってきます。


ソフィ・カル:ひとの内面に目を向け、まっすぐに見つめていく

ソフィ・カルは、誰しもがひっそり抱いているような内面に目を向け、まっすぐに見つめていくアーティストです。2013年に原美術館での個展で出展されたふたつの作品シリーズ(後天的に失明した人々への取材をもとに写真とテキストで綴った「最後に見たもの」/初めて海を見る人々の表情を捉えた映像作品「海を見る」)は、「見ること」について考えをめぐらせる好機になりました。

カルはまた、昔の恋人など、身近なひとたちを題材にした作品を手がけることも特徴です。作品制作の傍ら妻にもカメラを向けてきた荒木経惟に代表される、いわゆる私写真の系譜にも合い通じるのがあります。作品「RACHEL, MONIQUE…」の裏には、彼女の母親が死に際に床に伏したときに初めて母親にカメラを向けたというエピソードがあります。この作品集には、彼女の家族アルバムの写真やノートから抜粋して構成されています。カル自身も制作に携わった装丁は、光沢のある白い布地に黄色の糸で文字を刺繍した豪華な仕様で、まるで本のオブジェのような上質なたたずまいに仕上がっています。

pov_2_03 彼女たちはいずれも近年日本で展覧会が開催されていて、このおかげで作品を観賞できる機会に恵まれました。やっぱり生の作品と触れられる体験は貴重です。余談ですが、わたしは展覧会に足を運んで感動したら図録を買うようにしています。展示されていた作品を見返すのもよし、専門家による評論をじっくりと読んで深めるのもよし。洋書の美術書と比べると手頃な価格帯なので、ぜひ試しに手にとってみてください。きっと展覧会の余韻に浸る以上に得るものがあるはずです。

過去記事はこちら
COLOR:色でみるカラー写真
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錦 多希子(にしき たきこ)

1984年東京生まれ。2012年より東京・恵比寿にあるアートブックショップ+ギャラリーPOSTに勤務。店頭対応のほかに、ウェブサイト上で新着本の紹介を更新する。その傍らに、ライターとしてインタビューやコラムの執筆を手がける。2015年春にはフリーマガジンhueを創刊(編集・執筆担当)。旅行と暮らしの道具に目がない。
www.post-books.info

本文でご紹介した書籍

Notes

ニキ・ド・サンファル(Niki de Saint Phalle)

1930年フランス・ヌイイ=シェル=セーヌ生まれ。2015年に国立新美術館で展覧会が開催された。

オノ・ヨーコ(Yoko Ono)

1933年東京生まれ、現在はニューヨークを拠点に活動。2015年に東京都現代美術館で展覧会が開催された。

ソフィ・カル(Sophie Calle)

1953年フランス・パリ生まれ。2015年に豊田市美術館で展覧会が開催された。

荒木経惟(あらき のぶよし)

1940年東京生まれ。「アラーキー」の愛称と丸いサングラスがトレードマーク。
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