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Ilustration by Daisuke Hiratsuka

Column_No. 01
COLOR:色でみるカラー写真

はじめまして。錦多希子です。
普段は恵比寿にある美術書専門の洋書店+ギャラリーPOSTで働いています。
美術やデザイン、写真といった芸術的表現は、どこか高尚なものと捉えられ敬遠されがち。けれど、それは食事をしておいしいと感じたり、かっこいいなと思う洋服を着ることとそんなに変わりなく、実はもっとシンプルに愉しむことができるものなのです。自分なりの視点からみて面白いなと思えたら、今までよりも気楽に向き合えるかもしれません。どんな些細なことでもいいから、好きになったり興味をもつとっかかりを掴めたら、何かが変わるはず。作品の善し悪しについては専門家の評論に任せることにして、ここではわたしなりのVIEWPOINT(観点) を紹介し、モノの見方の可能性を拡げてもらえたら嬉しいです。

さぁ、実際に触れてみよう! …とは言っても、一体どこから入っていいかなんてわからないよ!」という声が聞こえてきそうですが、ほんとおっしゃるとおり。世の中には数え切れないほどの作品がありますからね。それならば、まずは「色」で選んでみてはどうでしょうか?今回は色に特性のある写真作品に目を向けてみます。


色と光: 日常に潜む美しさに目を向ける

pov_01_01 アメリカの写真家テリ・ワイフェンバックの作品は、日常に潜むほんのささやかな瞬間を捉えんばかりとシャッターを刻みます。写真集「Between Maple and Chestnut」では、住宅街に生い茂る緑や紅葉した木々が陽の光を浴びて燦々と輝く美しいようすを鮮明に映し出しています。光に目を向けるとき、きっと彼女の心のなかはこんなふうに彩られているのでしょう。作品を通じて写真家の目線に立てるというのも、写真作品の魅力です。
テリと写真による往復書簡を交わした写真家・川内倫子の作品もまた、透明感のある色彩が特徴的です。写真集「Gift」では、そんな彼女たちふたりのやりとりがひとつのシーケンスのように紡がれています。

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ヴィヴィッド・カラー: 鮮やかな色彩がもたらすインパクト

pov_01_022 pov_01_032 ヴィヴィッドな色彩は、眠気が吹っ飛ぶようなパンチがあります。
現代写真の大きなターニングポイントともなった「ニュー・カラー」ムーブメントの第一人者として知られるアメリカの写真家ウィリアム・エグルストンの捉える風景写真は、その豊かな色彩表現が象徴的で、一度観たら忘れられません。雲ひとつない青空。すこし日焼けしてはげかけたペンキの色。エグルストンの写真を観ると、撮影した時代に生まれていないはずのわたしですら郷愁をそそられ、センチメンタルな気持ちが込み上がってきます。主張の強い色と色とが見事に調和した情景は、写真集「THE DEMOCRATIC FOREST」でも健在です。


コントラスト: 対比によって生まれる効果

thumb_P1288889_1024 コントラストが特徴の作品といえば、イタリアの写真家ウォルター・ニーダーマイヤーでしょう。写真集「Titlis」で繰り広げられる、雪山のなかに色とりどりのウェアを身にまとった人々が点在している景観は、まるで白い紙に色絵の具を垂らして描いた絵画のよう。ハイキーの写真は現実世界を写しているのに、幻想的で白昼夢を見ているかのような心地になります。

pov_01_08 光と影のコントラストにより生まれる情景もあります。ファッションフォトグラファーとして日本でも多くのファンを擁するオランダの写真家ヴィヴィアン・サッセンの写真集「UMBRA」では、長年向き合ってきた「影」が作り出すフォルムにより、グラフィカルなビジュアルがあらわれます。これは、二次元という特性をもつ写真だからこそできる表現です。
光を捉えるテリと、影を追うヴィヴィアン。同じ写真でも全く異なる着眼点をもつ作品を対比して見ていくのも面白いですね。

これらの着眼点はほんの一例です。皆さんも、例えば自分の好きな色が際立った写真を追ってみたり、あるいは自動車やお花など普段から愛着のあるものが被写体になった写真に映り込む色に着目してみてください。きっとこれまでとは違う、何か新しい発見があるかもしれませんよ。
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錦 多希子(にしき たきこ)

1984年東京生まれ。2012年より東京・恵比寿にあるアートブックショップ+ギャラリーPOSTに勤務。店頭対応のほかに、ウェブサイト上で新着本の紹介を更新する。その傍らに、ライターとしてインタビューやコラムの執筆を手がける。2015年春にはフリーマガジンhueを創刊(編集・執筆担当)。旅行と暮らしの道具に目がない。
www.post-books.info

本文でご紹介した書籍

Notes

テリ・ワイフェンバック(Terri Weifenbach)

1957年生まれ。自然のある風景を鮮やかなカラー写真で撮影する作風で知られる。

川内倫子

1972年生まれ。2012年に東京都写真美術館で開催された個展をはじめ、日本国内外での展覧会を重ねている。

ウィリアム・エグルストン(William Eggleston)

1939年生まれ。日本では2010年に原美術館やSCAI THE BATHHOUSEで個展が開催されたことがある。

ウォルター・ニーダーマイヤー(Walter Niedermayr)

1952年生まれ。SANAAが設計した金沢21世紀美術館を撮影するなど、日本とも縁のある写真家。

ヴィヴィアン・サッセン(Viviane Sassen)

1972年生まれ。ファッションフォトグラファーとして活躍する一方、自身の作品の制作にも励む。

ニュー・カラー

1960~70年代にかけて起こった、芸術写真のムーブメント。現代写真史における大きな転換点とみなされている。

ハイキー

露出オーバー(適正露出よりも明るくすること)で撮影し、画面全体を明るく仕上げること。
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