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Ilustration by Daisuke Hiratsuka

Column_No. 04
GO OUT!:アートを求めて旅に出よう

こんにちは。錦です。
早いもので4月も後半にさしかかり、わたしの住む東京では薄着で外出できるような日も増えてきました。いい陽気に背中を押され、どこか遠くへ出かけたくなりますね。

せっかくの休日でもスイッチの切り替えがうまくできず、いまひとつ日常を脱することができないときってありますよね。そんなときは、時間が許せば思い切って物理的に遠くへ旅立ってみたら、何かしら変化があるかもしれません。名所を訪れる観光旅行もいいですが、たまには「アート」をテーマにした旅行を計画してみてはどうでしょうか?普段の慌ただしさから離れ、のんびりとした時間のなかで身も心も開放的になって作品を鑑賞してみたら、普段は構えてしまうようなひとでもアートの面白みを素直に実感できるはず。今回は以前わたしが訪れたなかでも特に印象に残っているオススメスポットをご紹介します。


金沢21世紀美術館: 金沢の中心街にあるシンボリックな現代美術館

pov_04_01 2015年春には北陸新幹線が開通して、首都圏から日本海側へのアクセスが抜群によくなりました。交通網が充実すると、ぐっと距離が縮まったような気になって、実際に行ってみようかなと思うようになります。

ところで、金沢と聞いて一体何を思い浮かべますか?おそらく、兼六園や茶屋街といった史跡の印象が強いのではないでしょうか。しかし、金沢の魅力はそれだけではありません。実は、北陸の小京都という既成のイメージを刷新させてくれるような素晴らしい現代美術館があるんです。

2004年に開館した「金沢21世紀美術館」は、地域住民にはもちろん、全国から連日多くの来場者が訪れます。円盤や円柱を彷彿させるような丸い形状の敷地に、日本を代表する建築家ユニット・SANAA(サナア)が設計した城を基調とする館が特徴で、館内には展示室や図書館、カフェ、ミュージアムショップなどがぎゅっと凝縮されています。

pov_04_05 趣向を凝らした企画展は毎度見応えがあるのですが、同館に収蔵されている常設作品たちも存在感を放っています。来場者自らが作品と接点を持てるような、体験型の作品が多いです。なかでも、光の芸術家と称されるジェームズ・タレルの「ブルー・プラネット・スカイ」は見逃せません。正方形に切り取られた天井からは空がみえます。この空間に身を置き、天候や時間、四季を通じて絶えず変化する空の動きを通じて、光を知覚する作品です。アートのイロハや難解なコンセプトを知らなくとも、老若男女問わず誰もが体感できるという点に懐の深さを感じます。

pov_04_04 そのほかにも、レアンドロ・エルリッヒの「スイミング・プール」は大人気で、大人から子どもまで夢中になって戯れている姿を目にします。



直島: 瀬戸内海に浮かぶ現代アートの聖地

pov_04_08 普段勤めるPOSTに来てくださる海外からのお客さまに「東京以外にはどこを訪れる予定なの?」と尋ねると、京都と同じくらい頻繁に名前が挙がるのが「直島」です。

岡山県と香川県に挟まれた瀬戸内海に浮かぶ小さな島には、現代美術の代表的なアーティストの作品群がこれでもかというほどに集結しており、日本国内では屈指の作品数を誇ります。この島のランドマークは、2012年にルイ・ヴィトンとのコラボレーションでも話題になった、前衛美術作家・草間彌生を象徴する水玉模様に彩られたカボチャでしょう。また、土地の形状を活かして設計された地中美術館では、21世紀美術館の項でご紹介したタレルの作品「オープン・スカイ」にも出会えます。そして、島の集落のなかに点在する空き家を改修して、空間そのものを作品とした「家プロジェクト」という、島民の暮らしぶりを垣間見ながら杉本博司大竹伸朗といった現代美術作家の作品を鑑賞するというユニークなプロジェクトもあります。

pov_04_07 直島の周辺にある豊島(てしま)や犬島、女木島などの島々でも、美術作品を鑑賞できます。この地域では3年に一度「瀬戸内国際芸術祭」という現代アートの祭典が行われており、ちょうど今年2016年は開催年にあたります。これを逃したら次回は3年後。いい機会なので、時間をつくって足を伸ばしてみてはどうでしょう?

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箱根 彫刻の森美術館: 自然に抱かれた屋外彫刻の宝庫

pov_04_06 「さぁ出かけよう!…そうは言っても遠出なんてとてもじゃないけれど無理だ…。」そんなご多忙な方には、日帰りの小旅行がオススメです。ちょっと頑張って早起きしてみたら、普段よりずっと密度の濃い1日を過ごすことができるはず。ほんの束の間でも日常を離れたら、身も心もリフレッシュできますよ。

新宿からロマンスカーに乗り込めば、2時間足らずで温泉地・箱根にたどり着きます。ここまでやってきたのだから、山に囲まれた自然のなかでアートに触れたいところ。そんな想いを叶えてくれる、とっておきの屋外美術館があるんです。その名も「箱根 彫刻の森美術館」。約7万㎡にも及ぶ緑豊かな庭園のなかに、約120点もの彫刻作品が点在しています。モビール作品が有名なアレキサンダー・カルダーの立体彫刻や、以前このコラムで紹介したニキ・ド・サンファルの「ナナ」シリーズもこちらで観ることができます。そして、何と言ってもここの目玉はピカソ館。言わずと知れた20世紀を代表する巨匠・ピカソの初期から晩年までの作品を一度に観られる貴重な施設です。

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現地へ訪れる前に、まずは今回紹介したアーティストの作品集をみて予習してみるところから始めてみてはどうでしょうか?ある程度アーティストのことを知っておくと、実際に作品を観たときの楽しみも倍増します。

お仕事やプライベートの時間が大半を占めるひとにとっては、距離に関わらず余暇をとること自体が夢のような話…。そんなひとこそ、街中にあるアート作品に目を向けてほしいです。例えば渋谷駅のJR改札口と井の頭線改札口とを結ぶ連絡通路には、岡本太郎の巨大壁画「明日の神話」が恒久設置されています。作品の前を横切ると、雑踏の波に呑まれずエネルギーがほとばしるようすに圧倒され、つい足を止めて見上げてしまいます。

日本でもこうしたパブリックアートの設置がもっと増えて接する機会が多くなれば、欧米のように誰もが気軽に楽しめるようになるかもしれませんね。
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錦 多希子(にしき たきこ)

1984年東京生まれ。2012年より東京・恵比寿にあるアートブックショップ+ギャラリーPOSTに勤務。店頭対応のほかに、ウェブサイト上で新着本の紹介を更新する。その傍らに、ライターとしてインタビューやコラムの執筆を手がける。2015年春にはフリーマガジンhueを創刊(編集・執筆担当)。旅行と暮らしの道具に目がない。
www.post-books.info

Notes

サナア(SANAA)

妹島和世(1956年茨城県生まれ)と西沢立衛(1966年横浜市生まれ)とによる建築家ユニット。2010年には建築界のノーベル賞ともいわれるプリツカー賞を受賞した。

ジェームズ・タレル(James Turrell)

1943年アメリカ・カリフォルニア州生まれ。新潟県十日町市にある「光の館」は、タレル作品を宿泊施設として公開している。

レアンドロ・エルリッヒ(Leandro Erlich)

1973年アルゼンチン・ブエノスアイレス生まれ。2014年には金沢 21世紀美術館で大規模な個展が開催された。

草間彌生(くさま やよい)

1929年長野県生まれ。幼少期から悩まされていた幻覚・幻聴から逃れるようにして、水玉模様と網目をモチーフに絵画を描くようになった。

杉本博司(すぎもと ひろし)

1948年東京都生まれ。写真作品だけでなく、建築に関する作品も手がけている。

大竹伸朗(おおたけ しんろう)

1955年東京都生まれ。多岐にわたる作品群のなかでも、スクラップブックに関してはライフワークのように制作に勤しんでいる。

アレクサンダー・カルダー(Alexander Calder)

1898年アメリカ・ペンシルバニア州生まれ。ユニークな形と色とりどりの色彩感覚が印象深いモビール作品が象徴的。

ニキ・ド・サンファル(Niki de Saint Phalle)

1930年生まれ。2015年に国立新美術館で大規模な個展が開催されたことが記憶に新しい。

パブロ・ピカソ(Pablo Picasso)

1881年スペイン・マラガ生まれ。キュビズムの作品の印象が強いが、彫刻作品なども魅力的で見応えがある。

岡本太郎(おかもと たろう)

1911年川崎市生まれ。大阪万博のシンボルともいえる「太陽の塔」を手がけた。


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